なんとなく手に取って読んでみたのだけど、直木賞を受賞した『何者』のアナザーストーリーとのこと。ちなみに『何者』は読まなくても充分に楽しめると思う。
主人公が違う6つの作品からなる短編集。
それぞれの物語の主人公は『何者』の登場人物なのかな…と推察するものの、未読のため何とも言えない。作者の作品は何冊か読んだけれど「上手くなりましたね!」と素直に感心した。
直木賞受賞も納得。着々と実力を付けている気がする。
『何様』朝井リョウ
- 就職活動を描いた作品『何者』のアナザーストーリー。
- 光太郎が出版社に入りたかったのはなぜなのか?
- 理香と隆良の出会い。
- 瑞月の父に何があったのか?
- 拓人を落とした面接官の今。
- 短編6つ収録。
朝井リョウは『桐島、部活やめるってよ』でブレイクした作家さんで、若者が主人公の話が得意なのかな…と言う印象。
現在、作者は27歳。感心したのだけれど、数年前まで兼業作家でサラリーマンだったとのこと。「そりゃ、会社員の描写も上手いはずだわ」と納得した。
天才型じゃなくて、努力型の作家さんなのだと思う。作品を読んでいても真面目な感じが滲み出ている。
物凄く面白いかと言われると、正直そこまででもない。ただ「今の若い人の感覚ってこんな感じなんだなぁ」と感心させられた。
私が若い頃とは少し感覚が違うのだけど、彼らには彼らの価値観があって、一生懸命頑張っているんだなぁ…なんて事を思った。
唯一、私も共感したのは『むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった』。
真面目な人間が割を食う…と言うか「ヤンキーがたまに掃除すると褒められるけど、真面目な生徒は当たり前にやってるんだよ」的な話。
ラストへの持っていきかたとか、解釈には同意出来ないけれど、主人公の心にあるモヤモヤした感情は「分かるわぁ。私も分かるわぁ」と共感しながらページを繰った。
若い作家さんが着々と上手くなっていくのを眺めるのってワクワクする。
朝井リョウはこれからどういう方向に行くのだろうか?
人間観察から物語を作る人だとお見受けするので、学生でもなくサラリーマンでもなくなったこれからが勝負なんじゃないかな…と思う。
とりあえず、この作品のベースとなった『何者』を読んでみたい。
何様 朝井リョウ 新潮社