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桐島、部活やめるってよ 朝井リョウ 集英社文庫

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『桐島、部活やめるってよ』は第十二回小説すばる新人賞受賞。

発売当時はそこそこ流行っていて書店で平積みされていたのを記憶している。題名になっている『桐島、部活やめるってよ』というフレーズはネットスラング的に流用されていたっけか。

その時は食指が動かなかったのだけど、以前読んだ『チア男子!!』が予想外に面白かったで、読んでみようとおもった次第。

だが期待とは裏腹にまったく面白くなかった。

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桐島、部活やめるってよ 朝井リョウ

ザックリとこんな話
  • 男子バレーボール部のキャプテンだった桐島が部活をやめるところからスタート。
  • 同級生5人を主人公にした5編からなるオムニバス形式。
  • その編の主人公の視点からは、別の編の主人公の心は分からない設定。
  • 物語は金曜日から翌週の火曜日まで5日間。

連作短篇形式で1話ごとに主人公が変わるタイプ。

男子もいれば女子もいて、リア充もいればそうでない子もいた。

感想

「スクールカースト」という概念を描いた作品という意味では異議があるのだろうけれど「だからどうした」と言ってしまえばそれまでの話。

現役の高校生なら登場人物に自分を重ねあわせる事も出来るかも知れないけれど、42歳のオバサンが自分と重ね合わせて読むのは難しかった。

特に私は陰気なヲタク娘だったのでリア充思考の人達に気持ちを添わせる事が出来ない……と言う以前に、リア充の心情にまったく興味が持てないでいた。

登場人物の多くはリア充なのだけどスクールカースト下位に属する男子生徒で『映画研究会』の子描き方がちょっと気になった。

自分達が作った映画がコンクールで賞を取るのだけど、スクールカーストを意識し過ぎているせいか、彼はコンクールで賞をもらっても心底喜べていないのだ。

これって、リア充系の人が読むと「そりゃあ、そうだよね」と思えるかも知れないが「そちら側」に属していた人間が読むと違和感しかなかった。

……と言うのも、ジャンルを問わず、ヲタクという人種は「毎日自分の趣味の事ばかり考えている」人達で、基本的に空気は読めない(と言うか空気を読もうとしない)人が多い。

ましてや、コンクールで賞を取るレベルで何かに熱中しているレベルとなると、映画を観る事、作る事で頭が一杯で毎日が忙しくて、余計な事を考える隙間なんてないと思う。

スクールカースト下位に属するヲタクって、実は毎日楽しかったりするものだ。

どの登場人物も「イメージ」だけで書かれている気がした。

内面まで踏み込めていないと言うか。「高校生の漠然とした憂鬱を書いた作品」だと思うのだけど、引き込まれる要素が全く無かった。

しかし私が感心したのは新人賞の審査員がこの作品で賞をあげようと決断した事だ。

この作品はイマイチだけど『チア男子!!』は面白かったのだ。

もしかしたら作者は「処女作の呪縛から逃れられない」タイプの作家ではなく、成長していくタイプの作家さんなのかも知れない。また機会があれば別の作品も読んでみようと思う。

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