朝倉かすみの作品を読むのはこれで7冊目。意外とたくさん読んでいる。
サクッと読める作品が多いので、沢山読んだな実感は無いのだけれど、多作な方なのだと感心する。
今回は少女が主人公の5つ物語からなる短編集。結論から言うとイマイチだった。
少女奇譚 あたしたちは無敵
小学校の帰り道に拾った光る欠片。敵と闘って世界を救うヒロインに、きっとあたしたちは選ばれた。――でも、魔法少女だって、死ぬのはいやだ。(表題作) 少女たちの日常にふと覘く「ふしぎ」な落とし穴、全5編。
アマゾンより引用
感想
朝倉かすみは人間の描写が本当に上手。
そしてその中でも「嫌な感じの話」が抜群に上手い。今回の作品も少女時代独特の残酷さとか、独りよがりなところとかは上手に描写されていたと思う。
だけど、いかんせん話自体が致命的に面白くない。
「世にも奇妙な物語」のような、ちょっと不思議な大人のファンタジー集になっているのだけど、読んだ後にゾクッっとしたり呆けてしまうような感じが無く「で。だから何が言いたかったの?」と白々しい気持ちになってしまった。
なんと言うのかな…中二病要素が決定的に足りないのだ。
あえて少女を主人公にしているにも関わらず、全く生かし切れていない。これはミスマッチとしか言いようがないと思う。
もし朝倉かすみが大人を主人公ににして、ちょっと大人向けファンタジーを描いたいたら、それはそれで面白かっただろうし、似たような話であったとしても若い作家さんが中二病バリバリの少女を主人公にしていたら勢いだけで押しきれただろうと思う。
不思議系の短編って、なかなか難しい。
物語自体が圧倒的に面白ければ問題はないと思うだけど、そこまで面白い話って、そうそう読んだ事がない。星新一の凄さを改めて実感させられた。
次は是非とも別の路線でお願いしたい。
中二病少女をテーマにした作品は現役に近い作家さんにお任せてして、出来れば大人を主人公にした嫌な感じの物語を書いて戴きたいな…と思う。