遠藤周作の死後24年を経て未発表作品『影に対して』が発見された。『影に対して』は文芸誌『三田文学』に全文が掲載されていて、私はすでに三田文学を購入している。
私は遠藤周作フリークだけど『影に対して』自体はそこまで面白いとも思えなかったので「単行本は買わなくてもいいか」と思っていたものの「遠藤周作文学全集に未収録の作品が収録されています」との触れ込みだったので、まずは図書館で借りてみた。
結果から先に書くけれど、図書館借りて良かった!
私は遠藤周作文学全集を持っているので、短い短編1作のために『影に対して』の単行本を買う気にはなれないのだけど遠藤周作文学全集が手元にない遠藤周作ファンなら買っても損はないかな…とは思う。
影に対して
- 遠藤周作の死後、24年を経て発見された未発表作品『影に対して』を収録。
- 母や幼少期の頃をテーマにした短編集。
- 『遠藤周作文学全集』未収録作品『初恋』を収録。
感想
まずは『遠藤周作文学全集』未収録の『初恋』の感想から。
……申し訳無いけど、正直大したことない。遠藤周作の大連時代の初恋を描いたエピソードなのだけど、遠藤周作は多作な作家だけに大連時代を描いた作品はこれ以外にも色々あって「初めて読む気がしないんだけど…」程度の物語だった。
しかも一応『初恋』と言う題名になっているけれど、初恋要素はほんのちょっぴりしか入っておらず、要するに少年時代の思い出…って感じでしかなかった。そもそも遠藤周作は恋愛を書くのが上手じゃないのだ。
私は知っている話ばかりだったし、そもそも『初恋』以外は全集に収録されているので購入する気にはなれなかったのだけど、全集をお持ちでない場合は購入する価値はあると思う。
特にテーマを「母」に絞っているので、遠藤周作を考察するのには良いと思うし、文庫本に収録されていても昔の文庫本って文字が小さい上に行間がギュウギュウに詰まっていて読み難いので、単行本の読みやすいサイズで手元に奥のはアリだと思う。
……と褒めてみたものの「文学全集に未収録の作品が収録されています」と煽ってきた新潮社の売り方はどうかと思った。確かに未収録だけど、ファンが読みたがるレベルの作品だとは思えなかったんだもの。
ちょっぴり微妙な気持ちになってしまったものの、せっかく読んだし記録として残しておく。