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消滅世界 村田沙耶香 河出書房新社

村田沙耶香者の作品を読むのはこれで5冊目。

毎度、絶賛している訳でもなく「厨二病的だ」とか「まぁ、分からんじゃないけど」と微妙な感想ばかり書いているのに、それでも読んでしまうのは、なんだかんだ言って気に入っているからだと思う。

今回もいつもと同じような感想しか出なかったのだけど、村田沙耶香の最大のウリは「他に誰も書いていないような作品」であり「彼女だけの世界」を持っているところだと思う。

図書館に行っても、書店に行っても「どこかで読んだ事があるような気がする」作品が多い昨今、村田沙耶香の作風は珍しいと思う。

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消滅世界

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セックスではなく人工授精で、子どもを産むことが定着した世界。

そこでは、夫婦間の性行為は「近親相姦」とタブー視され、「両親が愛し合った末」に生まれた雨音は、母親に嫌悪を抱いていた。

清潔な結婚生活を送り、夫以外のヒトやキャラクターと恋愛を重ねる雨音。だがその“正常”な日々は、夫と移住した実験都市・楽園で一変する…日本の未来を予言する傑作長篇。

アマゾンより引用

感想

村田沙耶香は毎度、独特の感性でもって「家族」「性」「セックス」を柱に物語を紡いでいるのだけれど、今回もテーマは同じ。

そしてまたしても、トンデモ設定。

舞台は近未来日本で「セックス」や「家族」の代わりに人工授精で子供を産んで「楽園」と呼ばれる場所で、そこにいる大人全員が子どもを育てる……と言う世界が出来上がりつつある……と言う世界。

共同生活で大人全員が子どもを育てるって、なんだか宗教めいている。実際、そういう事をしていた新興宗教もあったような。

トンデモ設定ではあったけれど、けっこう面白かった。

人間はセックスをしなくなった代わりに、二次元に恋をして自慰に至る。結婚制度は一応あるけれど、夫婦間での性行為は「近親相姦」とみなされる。

「二次元に恋をする」だなんて、現代日本のヲタクの世界のようでいて、それが当たり前になっているあたりは「上手いこと考えたな」と感心してしまった。

一方「そりゃ無いわ」と思ってしまったのは、子育てに関する描写。

楽園での子育てはあまりにも楽ちんで、子育てをした事のある人なら「あー。はいはい」としか思えないのではなかろうか。

子どもって毎日笑ってる訳じゃない。母親の体力と気力と時間を搾り取るようにして育つものだ。

それに人間の子どもの場合「決まった1人の人間(父母・祖父母誰でも良い)から愛情を受けなければ、精神的な充足を得られない」と言う事が最近の研究で証明されている。

どこぞの新興宗教のように共同生活で子どもを育てると言う発想はあまりにも幼稚だ。

実際、過去に独裁者達が「共同生活で子どもを育てる」事に挑戦していて、彼らはすべからく失敗している。

しかし、作品はあくまでもフィクションなのだから、細かいところを突っ込むのは野暮なのかも知れない。作者にはこれからも、どんどんトンデモ設定の物語を書き続けて欲しい。

村田沙耶香にはどれだけネタの引き出しがあるのか興味がある。

この作品のラストは読者の感覚からすると狂気としか思えないような微妙な形で締めくくられているけれど、

いつか「これだ!」と思えるようなラストを書いて欲しいな……と思う。

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白い木蓮の花の下で
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