『世にも奇妙な君物語』は朝井リョウがテレビドラマ『世にも奇妙な物語』がを愛するがために『世にも奇妙な物語』をイメージした作品を書いたとのこと。
私にとって『世にも奇妙な物語』は「大好きってほどではないけど、1度観ちゃうと最後まで観たくなる」テレビドラマだ。
この本には『世にも奇妙な物語』同様、ちょっと怖かったり不思議だったりする短編が5つ入っている。
作者の作品は『桐島、部活やめるってよ』や『チア男子!!』に続く3冊目なのだけど、先に読んだ2冊とは全く違うイメージの作品ばかりで驚かされた。
世にも奇妙な君物語 朝井リョウ
- 5編からなる短編集。
- ネットやSNSが小道具になっている作品が2つ。
- 他人同士が1つ屋根の下に暮らすシェアハウスの話が1つ。
- ママ友・幼稚園ネタが1つ。
- 芸能界ネタが1つ。
感想
5つの話はどれもこれもヤフーのトップにあがってきそうなネタばかり。
特にネットやSNSネタは小道具の使い方が上手くて「流石は若い作家さんだなぁ」と世代の違いを感じさせられた。
どの物語もサクサク読めて、そこそこ面白いと思う。しかし正直なところ「そこそこ」の域は出ない感じがした。
そもそも「ヤフーのトップに上がってきそうなネタ」と言うところで意外性が無い。
流行りと言えば流行りだけれど「そう言うこともありそうだね」と思わせてしまった時点で『世にも奇妙な物語』の世界観には届いていない気がする。
そこそこ面白いのだけれど、どんでん返しが弱いのだ。どの作品を読んでも奈落の底に突き落とされるような絶望感を感じる事は出来なかった。
この作品とは直接関係ない話だけど、最近の若い作家さんって「爽やかな話も書けるけど、暗い話も書けますよ」アピールなのか、それとも編集者の意向なのか。いくつか似た路線の作品を書いたら、真逆の作品をぶつけてくる人が多い気がする。
最近読んだ作品だと、朝井リョウ以外にも朝比奈あすかと羽田圭介が、似た路線をいくつか書いた後に真逆の作品をぶつけている。
「色々な作風で勝負出来る」のは大切な事だとは思うものの、作家さんの世界が確立されていないうちに、真逆の物を書いたとしても上手くいかない気がする。「悪くはないけど、物足りない」のだ。
そしてこの作品もご多分に漏れず、悪くはなかったけれど、物足りなかった。次回作に期待したい。
世にも奇妙な君物語 朝井リョウ 講談社