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天鵞絨物語 林真理子 新潮文庫

コロナ自粛云々がスタートしてから、どうにも世の中陰気臭くて嫌になってしまう。

こんな時こそ華やかな空気に触れたいな…ってことで、久しぶりに手にとってみた。

林真理子と言うと世の中では「ふてぶてしい感じの女」ってイメージを持っている人が多そうだし、エッセイは高慢ちきな感じの文章が多いのだけど、初期の林真理子の時代物は面白いし気に入っている。

個人的に『本を読む女』『ミカドの淑女』『天鵞絨物語』は何度でも読み直したいくらい気にいっている。

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天鵞絨物語

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ザックリとこんな内容
  • 物語の舞台は昭和初期の上流社会。
  • 主人公の品子は贅沢でハイカラな学校として知られる文化学院に通う18歳。
  • 品子は財閥に育ち、初恋の相手である泰治と結婚する。
  • しかし夫は華族後を引く気高く美しい大使令嬢の真津子にとらわれていた。
  • むくわれぬ愛を求める品子と彼女を取り巻く人間模様を描く。

感想

ザックリとしたあらすじを読んで「あ。これって『風と共に去りぬ』じゃないの?」と感じた方がおられるかと思うのだけど『天鵞絨物語』は日本版『風と共に去りぬ』と言っても良いと思う。

聞いた訳ではないけれど、林真理子も『風と共に去りぬ』をイメージして書いている気がする。それくらい『風と共に去りぬ』っぽい話。

だけど『天鵞絨物語』の品子はスカーレットとは少し違う。スカーレットよりも器が小くて、スカーレットよりも愛に対して純情な女だ。財閥令嬢として育てられているので高慢ちき…と言えなくもないけれど、本質的には可愛らしい女だと思う。

むしろクズなのは夫の泰治。自分の妻に対して「奥さんに祝福される恋がしたい」なんて事を言ってしまうくらいクズ。

第三者視点で読んでいると「品子…そんな男には見切りをつけなよ」と言いたいところだけど、どの時代にも駄目な男が好きな女は一定数いて、それは誰にも止められないのだと、つくづく思う。

話の筋書き自体は複雑なものではないけれど、人物描写や時代背景が豪華で素敵なのだ。

特に書き出しが素晴らしい。

「今日は早く家ら帰ったほうがよくてよ」

和子が銀色のコンパクトを閉めながら言った。

「よくってよ」なんて言い回し、現代小説ではお目に掛かれないし「銀色のコンパクト」なんてものも映画でもなければ登場しない。この一行を読んだだけで「これは上流社会の物語なんだな」と期待が高まる。

持ち物、着る物、暮らしている屋敷…何もかもが豪華で素敵。2時間ドラマ化してくれたら素敵な作品が出来ると思う。

ラストは『風と共に去りぬ』と同じく、ハッピーエンドとは言い難いのだけど、伸び伸びと育てられたお金持ちの強みなのか、主人公が意外と凹まないのが素晴らしい。『風と共に去りぬ』のスカーレットのように「この人はどんな状況でもやっていける」と確信が持てる。

久しぶりに読んだけれど、長過ぎず、重過ぎず気楽に読めて、引き込まれる楽しい作品だった。

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