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果物売りのお嬢さん。

お昼過ぎ。インターフォンが鳴ったので玄関先に出てみると見知らぬ若いお嬢さんが立っていた。年齢は見た感じだと24歳~25歳。いかにも大学を出て数年…社会人経験の浅そうな印象の娘さんだった。

「和歌山から新鮮な蜜柑を持ってきました。私は難波にある○○って青果店の者です」とのこと。

実はその青果店。大阪では既に悪い噂しかない集団。路上でリヤカーを引いて果物を売っているらしく「驚くほど高額で売りつける詐欺みたいな果物屋だ」とか「バックにヤクザだか宗教だかが絡んでいるらしい」とか、とにかく酷い評判だ。

しかし訪問販売にやって来た娘さんは「大切に育てられた良い家のお嬢さん」と言うような雰囲気の人で、人の子の親として心配になってしまった。

しかし、粗悪品を買うほどお人好しではないので「ごめんね。うちは田舎が和歌山だから蜜柑も柿も実家から送ってくるのよ」と咄嗟に嘘をついてしまった。「要りません!」とピシャリと言うのは簡単だけど、キツイ事を言うのが可哀想に思ってしまったのだ。「そうですか。またお願いしますね」と行って、娘さんは帰って行った。

しかし、ご近所で蜜柑なんて売れないと思う。大阪は……と言うか我が家の近辺は和歌山出身で蜜柑なんて買わなくても良いようなお宅が多いのだ。我が家もしょっちゅう、ご近所からおすそわけを戴いている。

この年の瀬に蜜柑箱を担いで歩いたところで、どれだけの売り上げがあるのだろう? そして何よりも、どうして彼女はそんな怪しげな仕事をしているのだろう?

「こんな事してないで、真っ当な仕事しなさい」と説教をしたくなってしまった。

専業主婦で日中、家にいると訪問販売だの、怪しげなリフォーム業者のセールスマンだのがしょっちゅうやって来る。

その中には頼りなげな若者が多くて、いつも「この人はどうしてこんな事してるんだろう?」と思ってしまう。

娘を産むまでは「いりません!と厳しい口調で追い返していたけれど、親と言う立場になってからは「この子の親はこの子がこんな仕事してると知ったら、どんな気持ちになるのかな。もしかしたら知らないのかも知れないな……」とそんな事を思ってしまう。

訪問販売とか、怪しげな商売なんて昔からあったのだし「今どきの若者は…」なんて話ではないとは思うのだけど、若い人が詐欺まがいの事に手を染めているのを目の当たりにすると、なんだか居たたまれない気持ちになってしまう。

私にはどうする事も出来ないけれど、蜜柑箱を抱えてやって来た娘さんが、何かのキッカケで真っ当な道に戻ってくれたらいいのにな……と思わずにはいられない。

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日記
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白い木蓮の花の下で
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