自分の生きる場所をニューヨークに求めた女性達と、彼女と付き合っているという男性達に取材したエッセイ本である。
ニューヨークで生きる……というと『情熱大陸』や『ウルルン滞在記』に出てくる人々のように「格好良く働く素敵な日本人」ってな印象を持つ人が多いと思う。
し、このエッセイに出てくる人々は、そんなタイプの日本人とは程遠くて、あまり良い表現ではないが「身持ちを崩しちゃった人々」だったりする。
イエローキャブ
「あかん。日本人は魅力ないもん。」元スタイリストのヨシコ(35歳)、ドラッグの売人リカ(24歳)、東京とニューヨークでレイプを体験した冬美(31歳)……孤独と貧乏暮らしに耐え、それでもアメリカに居続ける彼女たち。
5カ月に及ぶ徹底取材の後に見えてきた日本女性の意外な素顔とは? 衝撃のレポート!
アマゾンより引用
感想
ドラッグ中毒の女性。悪い男に、何もかもを絞り取られてちゃった女住む場所もなく、その日暮らしをしている女性。日本人女性にたかって生きている男性。国際結婚をしたものの夫から暴力を受けている女性。
しかし、この本は決して「告発本」ではなくて様々なスタイルで生きている人々をレポートしている…という姿勢がとても好ましく思えた。
そして、何より「それでもニューヨークが好きだ」と言いきる彼らの姿は「そんな人生もアリかもね」と思わせる強さのような物が見受けられた。
家田荘子は彼らの生き方に、ある時は戸惑いながら、ある時は反発しながら、それでも決して非難しようとはせず、その生き方を追いかけてゆく。
たとえ、それが家田荘子の持つ考え方とは異なる生き方をしている人であっても「彼女(彼)が良いと思っているのなら、それで良いではないか」と考え彼らの背中を見ながら、その行く末を祈る姿には心を打たれた。
この本に登場する人々は、一般的な感覚で言うならば社会からドロップアウトしてしまった人だと言える。そんな彼らを否定したり、非難するのは簡単だ。
しかし、自分の価値観と異なる人間がいるということを認識するならば「否定」や「非難」は決して簡単に出来るものではない。
もっとも、ドラッグや違法行為は、決して誉められた事ではないのだが。
1991年に書かれたエッセイなので、ネタも古めではあるし「読み物」としては、それほど出来た作品は言えない。
しかし、作品の基盤となっている「価値観の違う人間でも否定しない」という姿勢がなにげに微笑ましくて、ネタのキツさと反して爽やかな印象の1冊だった。