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八幡炎炎記 村田喜代子 平凡社

ここ数年ハマっている作家さんなのだけど、今までの作風とは全く違っていて驚かされた。

それまでの作品をイメージして読むとコレジャナイ感半端ないこと請け合い。

でも、これはもしかしたら大作の香りがする。

実はこの作品のラストは『第一部了』となっているのだ。この作品が長い長い物語のさわりの部分だけだとしたら……今のうちに押さえておくことをオススメしたい。

1冊だけなので「面白くなるよ」とは言い切れないのだけれど、大作になる予感がする。これは「買い」だ。

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八幡炎炎記

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敗戦の年に生を享けたヒナ子は、複雑な家庭事情のなかで祖父母のもと、焼け跡に逞しく、土筆のように育ってゆく。炎々と天を焦がす製鉄の町・北九州八幡で繰り広げられる少女の物語。自伝的小説。

アマゾンより引用

感想

作者、村田喜代子を投影したと思われる主人公のヒナ子は終戦の年に生まれている。もう、それだけでワクワクするではないか。

しかも題名からお察しの通り、物語の舞台は製鉄の町、八幡。作者の故郷とのこと。読み始めた時はヒナ子が主人公だとは全く思わなかった。

一応、主人公はヒナ子という体裁だと思うのだけど群像劇と言っても良いと思う。

物語のスタートは広島。

紳士服を仕立てる洋裁職人克美を主人公として話が展開していく。

克美は女たらしの男で自分を仕込んでくれた親方の妻と駆け落ちするので「なるほど。洋裁職人が主人公のエロティック・ドラマティックな物語なのね」と思っていたら、読み進めていくうちに全く違う方向に走って行って面食らってしまった。

「長い物語で色々な人達に焦点が当たる」と言う事を知らずに読むと辛いかも知れない。私は途中まで辛かった。

「どうして話の視点が変わっていくの?」と。

どの視点にも思い入れる事が出来なくて、イマイチ物語にのめり込む事が出来なかった。しかし、それでもなお読み進める事が出来たのは描写の鮮やかさにあると思う。

私はずっと大阪で暮らしていて他所の土地の事を知らないのだけど、それこそ祖母から聞いた「子どもの頃の楽しかった話」を聞かされているような錯覚に陷った。

当時の学校のこと、八幡の街のこと。登場人物達が生き生きと描写されているのは流石だと思った。

……とは言うものの『第一部了』と書かれているのを見るまでは、ちょっと物足りなさを感じたのも事実だ。

最初からずっと「今回はイマイチ登場人物の気持ちに乗っかる事が出来ない」と言う思いながら読んでいた。

そして最後で「なるほどなぁ。これは、いつも読んでいるタイプの作品じゃなかったんだ」と納得した。

恐らくこの作品は長い物語の一部なのだと思う。

もしかしたら大作になるのかも知れないけれど、続きが面白いと言う保障は何も無い。そして何よりも終わっていない作品をどうのこうの言うのは難しい。

これから先、この作品に登場した人達がどうなっていくのか全く見当がつかないのだけど、続きを読むのが楽しみでならない。

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白い木蓮の花の下で
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