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五十坂家の百年 斉木香津 中央公論新社

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斉木香津は初挑戦の作家さん。

図書館の『新刊コーナー』飾られてあった表紙に惚れて手に取った。ジャケ買いならぬ、ジャケ借り。

古めかしいセーラー服を来た双子の少女が淫靡な感じで「これはたぶん好みの本だ」とピンときた。実際、私好みの本だった。

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五十坂家の百年

その朝、双子の老姉妹が手に手をとり、崖から飛んだ。

疎遠だった子らが葬儀に集い、やがて武家屋敷の床下に隠された四体の遺骨を見つけ出す。

これは誰?いつからここに?金貸し一族の淫靡で切ない歴史と、“乙女”のゆがんだ欲望を描き出した、背徳のミステリー。

アマゾンより引用

感想

題名通り「五十坂家」の100年の歴史が描かれている。内表紙をめくるとドーンと家系図。読了するまで何度となく家系図のお世話になった。

横溝正史のおどろおどろしい世界が好きな人ならそこそこ面白く読めるのではないだろうか。

大正から平成まで続く大河ドラマで、難癖を付けるなら大河ドラマと言うには小じんまりまとまり過ぎている感があるってところだうか。

家系図は「人喰い」と呼ばれた男からはじまる。

「人喰い」と言っても妖怪ではなくて「人を人とも思わない外道」と言う意味。彼は財をなし、その財産は子孫に受け継がれていく。

子孫は広大な屋敷で暮らすのだけど、この屋敷で起こるおどろおどろしい物語がメインの話。良い意味で「雰囲気小説」だと思う。

設定だけでワクワクするし、特に悲劇の原因とも言える瑠璃子が活躍するパートは面白くて一気に読み進めた。

読みやすい文章でサクサク読めたのだけど残念ながら表紙を見て期待したほど、おどろおどろしくは無かった。

横溝正史作品のおどろおどろしい度合いを100とするなら、『五十坂家の百年』は40くらい。

景気良く死人が出る割に、血みどろって感じでもないし、登場人物達の情念とか怨念のようなものも感じさせてはくれなかった。

なんだかちょっと「惜しい」感じだ。

ラストは一応ハッピーエンド風にまとまっている。そこもちょっと残念。今風な落としどころだとは思うけれど、アッサリと風呂敷を畳んでしまった事で物語がいっきに軽くなってしまった印象を受けた。

軽く物足りない感じがあるのは否定出来はないものの、サクサク読めてそれなりに面白い作品ではあった。

個人的に「一族の物語」を描いた作品が好きなので、これはこれでアリだと思う。テーマの割にアッサリな作風だったけれど、作者の他の作品も読んでみたいと思った。

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