有吉玉青は『恍惚の人』『華岡青洲の妻』の作者、有吉佐和子の娘さん。
私の中では「エッセイを書いている雑文屋さん」の印象が強く、今回は日本文化にまつわるエッセイ本。
「エッセイ」と「随筆」は同じ意味を持つのでどちらを使ってもいいと思うのだけど、有吉玉青の書くものは「随筆」よりも「エッセイ」と言った方がしっくりくるような気がする。
雛を包む
大好きな着物の衣ずれの音のこと、祇園の懐かしい宿のこと、山本夏彦さんの鳶色の瞳のこと、そして母が描いたうさぎの茶碗のこと。
四季折々の茶席のはなしから、日本語や歌舞伎・文楽まで、やわらかに、日本の「琴線」に触れる、三七篇のエッセイ。
アマゾンより引用
感想
着物の話、茶道の話がメインで、ことに着物への思い入れが面白かった。
日本人の女のお洒落は最終的に着物へ行き付くような気がする。私も着物が大好きだ(着ないけど)。
民族衣装ってヤツは、その国の人が似合うように出来ているので、日本人の着物姿はやっぱり素敵なのである。電車などで着物の御婦人を見ると、思わず見入ってしまう。
それにしても作者は、たくさんの愛情をもらって伸びやかに育ったのだなぁ……と思う。
その大らかさは檀一雄の娘、檀ふみとちょっと似ている。有吉玉青の方が檀ふみよりも「お嬢さん」な感じが強いけれど。
作品自体は可も無く不可も無く。丁寧に書かれているし、それなりに面白いのだけど優等生過ぎて印象に残らないのだ。
なんか、こぅ…毒が無い。それが魅力と言えば魅力なのだが、物足りない感がつきまとう。
日曜日の午後に紅茶でも飲みながら、なんとはなしにページを繰るには適しているだろうけど。
ほどほどに楽しめるかな……って感じの作品だった。
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