読んだ本の『50音別作家一覧』はこちらから>>

八月の御所グラウンド 万城目学 角川書店

記事内に広告が含まれています。

『八月の御所グラウンド』は第170回直木賞受賞作。万城目学と言えば『鹿男あをによし』とか『鴨川ホルモー』『プリンセス・トヨトミ』などの作品で人気作家として知られているけれど、今まで直木賞とは無縁だった。

万城目学の実力は間違いないものだし、直木賞は妥当なのかも知れないけれど「どうせなら『鴨川ホルモー』か『プリンセス・トヨトミ』に直木賞を出して欲しかった」って気持ちでいっぱいになってしまった。

『八月の御所グラウンド』面白かったけれど『鴨川ホルモー』や『プリンセス・トヨトミ』で感じた勢いと熱さが無くなっていて、その分真面目さが加わっている感じがした。なんと言うのかな…子どもの好きな不謹慎なアニメと文部省推奨の教育臭いアニメの違いくらいはある。

だけど『八月の御所グラウンド』自体はツッコミどころのない良い作品なので直木賞の受賞に異論はない。

今回の感想は軽くネタバレ込なのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

スポンサーリンク

八月の御所グラウンド

ザックリとこんな内容
  • 表題作と『十二月の都大路上下(カケ)ル』が収録された短編集。
  • 『八月の御所グラウンド』は大学の先輩に借りた借金のカタに早朝の御所G(グラウンド)で謎の草野球大会『たまひで杯』に参加する羽目ことになった大学生の物語。
  • 『十二月の都大路上下(カケ)ル』は陸上部の駅伝の補欠繰り上げで女子全国高校駅伝で走ることになった絶望的に方向音痴な女子高校生の物語。
  • 「京都」だからこその不思議な体験が描かれていている。

感想

『十二月の都大路上下(カケ)ル』も『八月の御所グラウンド』もひと言で言うと幽霊譚だった。幽霊と言っても恨みとか怨念…と言うようなおどろおどろしい方向じゃなくて、誰もが知っている有名人が現代に蘇る…みたいなノリ。そして、どちらも若者が主人公で、駅伝と野球がテーマの体育会テイスト。運動部経験者が読むといっそう楽しめと思う。なお私は人生で1度もスポーツをしたことがない文化系ヲタクだ。

どちらの作品も良かったけれど個人的には表題作(直木賞受賞作)の『八月の御所グラウンド』よりも『十二月の都大路上下(カケ)ル』の方が好みだった。主人公が女子高生だったので同性…ってことで感情移入がしやすかったからだと思う。

私はスポーツ未経験者だけど、私の娘はガチガチの体育会系女子なので主人公達の葛藤も頑張りも理解できたし「頑張れ!」と素直に応援することができた。ただ物語の核になる「不思議な体験」については、正直なところ「あっても無くても良かったのでは?」くらいのエッセンスで物語の出来としては『八月の御所グラウンド』の方がこなれている気がする。

そして『八月の御所グラウンド』は学徒出陣とか戦争を絡めた物語なので良く言えば「日本人も知っておくべきこと」が描かれいた…ってことだし、悪く言えば「なんか真面目で説教臭い話」ではある。平和教育の題材に使われそうだなぁ…みたいな感じ。

『八月の御所グラウンド』は戦争とかそういうところのメッセージ性は高かったと思うのだけど、その分「野球やろうぜ!」的な熱っぽさは薄かった気がする。なんか戦争云々のメッセージにエネルギー吸われちゃったような…。

それはそれとして。万城目学の直木賞受賞は喜ばしく思っている。これからも活躍して戴きたい。突拍子がなくて勢いのある小説を期待している。

50音別作家一覧はこちら

作家名・作品名等で検索出来ます
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました