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稲荷山誠造 明日は晴れか 香住泰 ディスカヴァー・トゥエンティワン

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『稲荷山誠造 明日は晴れか』は書店員が「世に出したい」作品を選ぶエンタメ小説新人賞である『本のサナギ賞』の優秀賞受賞作品。新人賞って訳じゃなくて、あくまでも書店員さん達が「世に出したい」と思ってる…ってところが審査のポイントとのこと。

読後に調べたけれど作者の香住泰は2023年現在72歳。作家としては遅いデビューだったようで最初の単行本が出版されたのは2001年とのこと。

なんか予想外に面白くて今までこの作家さんの作品を読んだことがないのが不思議に思ってしまった。そして『本のサナギ賞』の趣旨に共感してしまった。本好きの書店員さん達が「オススメしたい」って思う作品なら間違いないよね…と。

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稲荷山誠造 明日は晴れか

ザックリとこんな内容
  • 主人公は関西の金融会社会長、稲荷山誠造70歳。
  • ある日、稲荷山誠造のもとに絶縁した娘、桃代の息子(自分にとって孫)の翔が訪れ、「お袋がいなくなった」と告げる。
  • 金のことしか頭と誠造と大食いなだけで頼りない翔は2人で桃代の行方を探すことになるのだが…

感想

『稲荷山誠造 明日は晴れか』は「感動しました。涙が止まりません」みたいな話じゃなくて、サクサクッと気持ちよく読んでドキドキしたり、ワクワクしたり、ちょっとウルッとしてみたりするタイプの作品だった。

素直に面白かった!

そもそも。「祖父(祖母)と孫」の組み合わせって物語的にオイシイ。新しいところだと『西の魔女が死んだ』がそうだし、古いところだと『小公子』とか『アルプスの少女ハイジ』なんかも同じパターン。年齢差のあるコンビが互いに相手からの影響を受けつつ成長していく過程は読んでいてたいへん気持ちが良い。

また親子でも恋人でも友達でもない「祖父母と孫」と言う近いんだか遠いんだかよく分からない絶妙な距離感が良いのだと思う。相手のことを知っているようで知らないくせに「孫だから」とか「じいちゃんだから」みたいな思い入れがあるあたり。

『稲荷山誠造 明日は晴れか』の稲荷山誠造はケチでガラの悪いけれど豪快で頼もしい大阪商人。一方、孫の翔は元いじめられっ子で何かにつけて自信が持てない現代っ子。対照的なキャラクターがグイグイと物語を引っ張っていってくれる。

この作品。映像化したら絶対に面白いと思う! 演技の達者な役者さんとイケメンの若手でコンビを組ませたら見栄え的にも良いし絶対に面白い。脇役も政治家だったりヤクザだったりとバラエティに飛んでいるので映像化しやすい気がする。

何かと気持ちが下がっている時期に読んだ…ってこともあって、読後になんだか元気が出た。ただ1つ物申すとするなら「稲荷山誠造のような関西弁を喋る人は50年前に絶滅してますよ」ってことくらいかな。50年前にはまだかろうじて残っていたけれど、もはや稲荷山誠造はファンタジー。大阪人としてそこのところは付け加えておきたい。

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