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悼む人 天童荒太 文藝春秋

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『悼む人』は第140回直木賞受賞作。作者の天童荒太は売れっ子作家…って感じなのだけど「私の好きな路線じゃなさそう」と言う予感があり、今までなんとなく今まで手を付けていなかった。

読んでもいないのに「好きじゃないかも」だと思うだなんて失礼にもほどがある話だけど、この予感は案外当たる。

世の中的には「泣ける物語」って感じだったそうだけど、残念ながら私はちっとも泣けなかったし、全く好きになれなかった。天童荒太が好きな人には「なんかゴメンね」としか言えないような感想なので、天童荒太が好きな方は、この先を読むのは遠慮して戴いた方が良いかも。

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悼む人

ザックリとこんな内容
  • 坂築静人は不慮の死を遂げた人々を“悼む”ため、全国を放浪していた。そんな静人の姿を3つの視点で描いていく。
  • 静人の行動に戸惑いと疑念を覚え、その身辺を調べ始める雑誌記者・蒔野。末期がんに冒された静人の母・巡子。殺害した夫の亡霊に取りつかれた女・奈義倖世。
  • 3つの視点がが、やがて1つの大きな物語として繋がっていく…

感想

亡くなった人を「悼む」旅を続けている青年のことが彼に関わる人達によって語られる形での物語。

静人は様々な形で亡くなった人達の死の現場を訪ね歩き「この方は生前、誰を愛し、誰に愛され、どんなことで人から感謝されてでしょう?」と亡くなった人がどんな人物だったかを聞いて歩いている…と言う設定。

「人の死を悼む」と言う行為は悪い事ではないものの、赤の他人が亡くなった人の事を聞く…と言う行為は見方によっては気持ちの良いものではない。「なにかの宗教なの?」とか「マスコミが面白おかしく報道しようとしてるの?」と感じる遺族もいるし、そうでなくても田舎町などでは見慣れぬ男が町をウロウロしていると不審人物として通報されたりもする。

静人の言うところの「悼む」と言う行為によって静人の姉の縁談は破談になっている。

……ごめん。この設定、ドン引きだわ。家族から「辞めて欲しい」と懇願されても、自分の好き勝手しちゃう主人公とか無理過ぎるわ。

静人が人を悼む旅に出るには理由があったし、彼の行動によって救われた人もいるけれど「身近な人を不幸にしてまでやる事か?」と思うと、静人のやっている事に賛同できなかったし、登場人物達の気持ちに寄り添うことが出来なかった。

作者が描きたい物とか、やろうとしたことのベースは分からなくもない。

例えば…だけどイエス・キリストにしても仏陀にしても、その行動は突拍子もないものだし、最初のうちは身近な人達の理解を得られなかった。だけど最終的にイエス・キリストの教えも仏陀の教えも多くの人に支持され、世に広まっていく。

でもさ。世界的な宗教の宗祖の行動と重ねて持論を展開するには弱過ぎだと思う。私には静人の奇行は自己満足としか思えなかったし、なんか気持ち悪い新興宗教の教祖のように思えてしまった。

一応、最後はいい感じ風にまとまっているけれど、ツッコミどころが多過ぎた。

……とは言うものの『悼む人』は直木賞受賞作。「感動した」と言う人も多いので、私の感性に合わなかっただけだと思う。

直木賞とか芥川賞を受賞した作品だからって好みに合わないことはあるよね…って事を久しぶりに思い出させてくれた1冊だった。

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