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映画『ビッグ・フィッシュ』感想。

3.5
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『ビッグ・フィッシュ』はティム・バートン監督のファンタジー映画。ダニエル・ウォレス(Daniel Wallace)のベストセラー小説『ビッグフィッシュ – 父と息子のものがたり』が原作。

題名のビッグ・フィッシュ』は、誰も信じないホラ話という意味合いがあるらしく、ホラ話ばかりしていた父とそんな父に反発していた息子の物語だった。

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ビッグ・フィッシュ

ビッグ・フィッシュ
Big Fish
監督 ティム・バートン
脚本 ジョン・オーガスト
原作 ダニエル・ウォレス
『ビッグフィッシュ – 父と息子のものがたり』
出演者 ユアン・マクレガー
アルバート・フィニー
ビリー・クラダップ
音楽 ダニー・エルフマン
撮影 フィリップ・ルースロ
公開 アメリカ合衆国の旗 2003年12月10日
日本の旗 2004年5月15日

ざっくりとこんな内容

身重の妻ジョセフィーンと暮らすジャーナリストのウィル・ブルームの父エドワード・ブルームは自らの人生を巧みに語って、聞く人を魅了するのが得意だった。

ウィルは幼い頃は父の奇想天外な話が好きだったが、年を取るにつれそれが作り話であることに気づき、いつしか父の話を素直に聞けなくなっていた。

3年前の自分の結婚式にエドワードが息子ウィルの生まれた日に巨大な魚を釣った話で招待客を楽しませた時、不満が爆発する形でウィルは父に今夜の主役は自分であると訴え、父は自慢の息子の結婚式を盛り上げるためだったが裏目に出てしまい、ウィルは一方的に父と疎遠になる。

ある日、母サンドラから父が病で倒れたと知らせが入る。ウィルは妻ジョセフィーンと共に実家へと戻る。しかし、病床でジョセフィーン相手にホラ話を語り出す父と、本当の父を知りたいと葛藤する息子はすれ違ったままだった。

エドワードは若い頃から楽天的で人を幸せにする事が大好きだった。

  • 街のお化け屋敷の魔女の眼帯に隠された片目で、自分の最後を知った。
  • 住んでいる街に5メートルもある巨人カールが現れた。住民を怯えさせるカールを説得して二人で生まれ故郷を出る事になった。
  • 森の奥に夢のように美しい「スペクター」という街を迷い込む。住人が裸足のため少女に靴を取られる。街を出たあとカールと寄ったサーカス団で運命の女性と出会った。
  • 恋した女性の素性を教えてもらう為、サーカスに入団するが、サーカスの団長は実は狼男だった。

…等、エドワードの語る自分の過去は何から何まで奇想天外だった。

父の荷物を整理していたウィルは古い証書を見つけると、エドワードの過去を聞くために、証書に名前の記された女性ジェニファーに会いに行く。お化け屋敷のような場所に1人で住むジェニファーからホラ話の続きを聞いた。

セールス帰りのエドワードは信じられないくらいの大雨をくらい、車ごと人魚のいる湖底まで沈んでしまう。翌日、水が引いたそこは不況で荒廃した「スペクター」だと気がついた。

エドワードは知り合いを説得し資金を集めて「スペクター」の再建に奔走した。見落としていたボロ屋敷に住んでいた頑固なジェニファーも説得して屋敷もリフォームした、

そんな一途なエドワードをジェニファーも愛してしまうが、妻子のために不貞関係を受け入れず、エドワードは昔のように美しくなった「スペクター」の街から去っていき二度と戻ってこなかった。

ジェニファーの話から、エドワードが多くの人に愛され、妻子を深く愛していたことを知る。

ウィルが家に戻ると、エドワードが入院し危篤状態になっていた。一人付き添いをするウィルにベネット医師が本当の話をする。 『ウィルが生まれる日に、エドワードはセールス出張をしており出産に立ち会えなかった。そのことをずっと悔やんでいた』だから、ビックフィッシュのホラ話をしているのではないかと語った。

夜中、危篤のエドワードが意識を取り戻し、息も絶え絶えにウィルに自分の最期の話をしてくれと頼む。ウィルは父の頼みを聞いてホラ話の結末を聞かせ、ウィルの話に満足してエドワードは息を引き取った。

そしてエドワードの葬式当日……

まるで悪夢を見ているような

『ビッグ・フィッシュ』はティム・バートン好きならオススメするけど、そうじゃない人にはオススメしない。

なんかこぅ…良い話ではあるけれど生理的に気持ち悪い部分が多いのだ。『チャーリーとチョコレート工場』とか『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の世界観が好きな人ならハマっちゃうと思うけど、合わない人にはとことん合わない気がする。

エドワードの妄想ターンは理不尽な悪夢を見ているような錯覚に襲われる。

特に「スペクター」にまつわるエピソードは「よく分からない街に迷い込んじゃう悪夢」さながら。日本人には馴染みのない風景だけど「なんか分からないけど気持ち悪い感じ」は通じるものがあると思う。

大男や狼男、シャム双生児の女性などと、異形の者の比率が高くてナイーブな人は夜中にうなされてしまいそう。

ギリギリセーフを走る

感心させられたのは「ティム・バートンは相変わらず倫理的にギリギリのラインを走るよね」ってこと。これは『ビッグ・フィッシュ』に限ったことじゃなくて昔から作風は変わっていない。

例えば…だけど、シャム双生児の女性とか匙加減をミスったら炎上物じゃない?

シャム双生児と言うと昭和人間からすると「ベトくん、ドクくん」のイメージが強いのだけど、ベトナム戦争で使われた枯葉剤の影響でベトナムでは多くのシャム双生児や奇形児が生まれたことが知られている。

エドワードは従軍先でシャム双生児の女性と知り合うのだけど「戦争でシャム双生児」と言うとアメリカ人ならベトナム戦争を連想しちゃうよね?

シャム双生児の女性には特に深い意味での役割が与えられていなかったのでセーフ…って感じなのかも知れないし「ティム・バートンだから仕方ないか」みたいな扱いなのかも知れない。何にせよ、表現に関して敏感になっている今の日本では考えられない。

大男にしても狼男にしても突き詰めると障がい者だし、なんだんかだとティム・バートンの歪んだ性癖が垣間見えて興味深かった。

美しさと不安感

『ビッグ・フィッシュ』が面白いかどうか…はさておき。ティム・バートンの映像はとにかく美しい。

例えば。『ビッグ・フィッシュ』が公開されたときのポスターの画像(後にDVDパッケージにもなっている)をご覧戴きたい。

ビッグ・フィッシュ

ビッグ・フィッシュ

黄色い水仙の花畑の中で見つめ合う男女。物語を知らなくても「ロマンティックだなぁ」と単純に思える。

ティム・バートンの撮る映画はどの場面も素晴らしくてポストカードにして保存しておきたいような美しさなのだけど、それと同時にどこか人を不安にさせる要素が含まれている。実際、黄色い水仙の花畑は意図的に作られたもので自然の風景ではない。自然そうに見えて実は人工的な物…というアンバランスさがティム・バートン作品の魅力なのだと思う。

父と息子の物語ではあるけれど

『ビッグ・フィッシュ』は父と子の和解を軸にした物語…って事になっているけれど、「父と子の絆」の描き方は浅いと思う。最後はいい感じで帳尻を合わせてきたけれど、親子愛よりも夫婦愛の方が印象的だった。

『ビッグ・フィッシュ』の原作本は読んでいないので、原作がどんな感じなのかは分からないのだけど、ティム・バートンの映画に関しては「父と子の物語」と言うよりも恋愛とか夫婦愛が主体で「父が息子に寄せる想い」についてイマイチ伝わってこなかったのだ。その分…と言ってはなんだけどエドワードが妻に寄せる想いの強さは十分伝わった。

『ビッグ・フィッシュ』は名作…とは言い難く、バランスの悪い作品ではあるけれど刺さる人には刺さるだろうし、私個人はけっこう好き。評価云々はともかくとして、ティム・バートン好きな人なら観ておいて損はない作品だと思う。

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白い木蓮の花の下で