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R.I.P.安らかに眠れ 久坂部羊 講談社

前回読んだ『善医の罪』は尊厳死を巡る裁判について書かれた作品だったけれど、今回は自殺希望者を募って殺害した男を巡る物語。

久坂部羊は今回に限らず、安楽死等に突っ込んできた作家さんだけど『R.I.P.安らかに眠れ』もその路線。

『R.I.P.安らかに眠れ』は「死にたい人を無理やり生かしておく事は本当の優しさなのか?」等、質問されたら即答できないようなところがテーマになっている。

今回はネタバレを含む感想になるのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

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R.I.P.安らかに眠れ

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ザックリとこんな内容
  • 出版社で働く薫子の兄が自殺志願者集めて殺人を犯した。
  • 薫子の兄の真也に世間の非難が集まる。
  • 連続凶悪事件を犯した兄の不可解な動機を解き明かそうと奔走する中で薫子は真也の「知らなかった一面」を目の当たりにする。
  • 自殺志願者を次々殺めた真也のた真実て?
  • 自殺の是非や安楽死等…誰もが目を逸らしたくなる問題に切り込んでいく。

感想

「面白かった」と素直に言うのが難しいタイプの作品だった。どちらかと言うと「面白かった」よりも「考えさせられた」って感じ。

主人公の兄、真也が殺害した人間は3人。

  1. 失恋した女性(自己肯定感が低く自殺未遂の経験有)
  2. 身体が動かなくなる難病の男性(妻の負担になりたくないとのこと)
  3. 天才系の破滅系芸術少年(希死願望有。自殺未遂の経験有)

物語を読み進めていくと真也は快楽殺人者ではなく、殺害した人達がそれぞれ心の底から死を望んでいたから殺害している。また、真也の元を訪れたものの、結局自分の殺害を依頼せず生きることを選んだ女性も登場する。

3人の被害者のうち難病の男性だけはタイプが違うのだけど、他の2人は以前から希死願望があって自殺未遂を繰り返している。

世の中には希死願望を持った人が一定数いて文学の世界だと太宰治が当てはまる。

  • 生き難さを抱えていて「死にたい」と希望する人間を無理やり生かし続けるのは優しさなのか?
  • 生きる事が苦痛でしかない病人を生かし続けることが優しさなのか?

……そう問われても、私は即答することができない。

例えば…だけど。私は重度の障害をもったお子さんの施設で働いているけれど、自分の意思で身体を動かすことが出来ず、口から食べ物を摂取することも出来ず、排泄もできないお子さんが長生きして幸せかどうか…聞かれると、黙り込むことしかできない。

……そんなこと、本人に聞かないと分からないことだし、もしかしたら本人だって分からないんじゃないかと思う。

医療が進み過ぎた現代では「死ぬ」ってことが大変になっていて、久坂部羊はずっとこのテーマに取り組んできたけれど、今回はそこに「生き難さを抱えた人」「希死願望を持った人」を突っ込んできたので、話が複雑になってしまっている。

また、真也を取り巻く人達の設定が複雑過ぎたのも残念な気がした。

  • 母  → 鬱病からの自殺。
  • 父  → 大腸がんで余命いくばくもない。
  • 兄  → 真也に辛く当たっていた(いじめ)が実は…。
  • 叔母 → 真也達家族に大きな影響を与える悪意の言葉を発している。

真也の母が鬱病から自殺しているのは100歩譲るにしても、それ以外の要素は詰め込み感が半端ない。特に後半に登場した叔母のエピソードは「そりゃないわ~」って感じ。

私は久坂部羊が大好きだし『R.I.P.安らかに眠れ』も面白くなかった訳じゃないけど、色々な要素を盛り過ぎて散漫な作品になってしまった気がする。

さらに言うなら最後にのドンデン返し的なエピソードは胸糞展開でしかない。話の途中で察した読者は多かったと思うのだけど、このテーマに「あえて」登場させなくても良かった気がする。そもそもガチ系のミステリ小説じゃないのだし。

読みごたえがあって面白い作品ではあったけど「高級材料を惜しみなく使ったのに実際に出来た料理は凝り過ぎているせいか、なんだかイマイチ…」みたいな感じになってしまったのが残念に思う。次の作品に期待したい。

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