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風は山から吹いている 額賀澪 二見書房

額賀澪の作品を読むのはこれで4冊目。

私の中で額賀澪は青春小説の人…と言うイメージが強いのだけど『風は山から吹いている』は一応ミステリのくくりに入る…らしい。

「らしい」と言うのは、正直言ってミステリ要素は雰囲気程度しか入っていなかったため。一応「山岳ミステリ」と言う触れ込みだけど、完全に青春小説だと思う。

路線で言うなら『競歩王』が1番近いかな…と言う印象。

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風は山から吹いている

ザックリとこんな内容
  • 主人公の大学生、筑波岳は高校時代、スポーツクライミングでインターハイを経験していたが訳あって大学では競技を続けないと決意していた。
  • 入学した岳は登山部の梓川穂高から誘いを受けて、登山部に入部する。
  • 梓川と登山を楽しむ岳スマホにスポーツクライミング時代のコーチから電話が入るのだが…

感想

悪くはなかったけれど『風は山から吹いている』は山岳ミステリとして売り出すような作品ではなかったと思う。ミステリを期待して読むとガッカリするけど、青春小説としてはアリかと思う。

『風は山から吹いている』はスポーツクライミングを挫折した若者が主人公だけど、私が心に残ったのは主人公、岳がスポーツクライミングをしていた時にお世話になったコーチである宝田の存在。

岳がスポーツクライミングを断念したのは「自分はオリンピックへ出られるほどの器がない」と言うところが大きかったのだけど、宝田の存在が大きかった。

コーチの宝田もまたスポーツクライミングの選手として生きてきたのだけど、セカンドキャリアが上手くいかず、非正規雇用のアルバイトをしながら母校のコーチとして働いていた。岳は「宝田のようになりたくない」と言う思いから、スポーツクライミングを断念する。

私は娘が一時期、体操に打ち込んでいただけにスポーツの世界の残酷さを肌で感じていただけに、宝田のエピソードは胸が傷んだ。

どんなに一生懸命競技に打ち込んだとしても、プロとして生きていけるのはほんの一握り。そしてプロになってもセカンドキャリアが上手くいく人はごくわずか。スポーツクライミングのようなマイナースポーツとなると、どれだけ厳しい状況だったかは想像に難くない。

作者の額賀澪は心底、スポーツを愛しているのだろうなぁ…と思う。

私は『競歩王』で額賀澪の作品を読むようになったのだけど『風は山から吹いている』はある意味、『競歩王』に並ぶ面白さがあった。

……とは言うものの「山岳ミステリ」と言う形を取ってしまったのは失敗だったと思う。だってミステリ要素なんて皆無に等しい。ミステリ音痴の私が読んでも「これをミステリって言うのはどうなのよ?」って気持ちになってしまったのだから大したものだ。

ミステリならミステリらしくビックリするようなトリックとかオチが欲しかった。

作品自体は嫌いじゃないけど、売り出し方が残念過ぎたし、ミステリは額賀澪の作風に合っていない気がする。次回は是非、熱いスポーツ小説を読ませていただきたいな…なんて事を思ったりした。

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白い木蓮の花の下で
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