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天切り松 闇がたり 第四巻 昭和侠盗伝 浅田次郎 集英社文庫

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毎度手堅く面白い。安心して読むことが出来ると言うか。

今回の作品では時代が大正から昭和に変わっていて、戦争の話などもからめているので、ロマンティック度は下がっているけれど、むしろ面白くなっていたように思う。

特に気に入ったのは表題作の『昭和侠盗伝』『惜別の譜』『王妃のワルツ』の3作品。

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天切り松 闇がたり 第四巻 昭和侠盗伝

時は昭和九年。関東大震災から復興を遂げ華やかなモダン東京を謳歌したのも束の間、戦争の影が徐々に忍び寄っていた。

ついに寅弥が我が子のようにいとおしんできた勲にも召集令状が届く。国の無体に抗おうと松蔵らが挑んだ企みとは?

激動の時代へと呑みこまれていく有名無名の人々に安吉一家が手をさしのべる五編。人の痛みを、声なき声を、天下の侠盗たちが粋な手並みですくいとる。

アマゾンより引用

感想

『昭和侠盗伝』は説教寅が我が子のように可愛がっていた子が召集されるにあたり盗人達が「今の世の中間違っている」とて、戦時下日本に一石を投じるような胸のすく「盗み」を披露する話。

戦争を絡めた話というのは、みょうに説教臭くなったり、悲劇的過ぎたりすることが多い中、これだけ上手くあしらったのは脱帽としか言いようがない。

説教臭くない程度の反戦思想がとても良かった。

『惜別の譜』は夫婦愛を描いた物語。

女性作家に夫婦愛を描かせると「上手いなぁ」とか「あっ、それって分かるわぁ」なんて感じに仕上がることが多いのだけど、男性作家が書くとロマンティックに仕上げてくれる人が多いように思う。

男性の方がロマンティストなのかも知れない。作者もまた然り。無口で不器用な昔風の男の「愛している」という気持ちが痛いほど伝わってきて、またそれをしっかり受け止める妻の姿に思わず目頭が熱くなってしまった。

『王妃のワルツ』は愛新覚羅溥傑の妃になって中国へ渡った嵯峨浩が女学生だった頃の物語。

叶わなかった恋と、育てていこうとする愛の対比がとても良かった。好きな人と結婚するのが最高だと思うし、それが理想なのだけど、そう思い通りにいかないのは今も昔も同じこと。

私は、読み物のとしてはブッチギリの恋が好きなのだけど、覚悟を決めて「育む愛」も好きなのだ。恋の終わりと愛のはじまりを描いた秀作だと思う。

……と言うよりも、むしろ私の好きなパターンだっただけなのかも知れない。

今回で完結とのことだけど、もう続きが読めないのかと思うと残念でならない。

登場人物達もそれぞれ年をとってくるので、これ以上続けるのは無理なのだと言うことは分かっているけれど、ずっと読んでいたいシリーズだった。

また1巻から通して再読してみたいと思う。

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