私。基本的に煽り要素の高い題名の本は読まないようにしているのだけど「大阪に来たらええやん! 」と書かれたら、ちょっと見逃せなかった。
親友のFが生活保護のケースワーカーをしている…ってこともあるし、私自身が児童福祉系とは言うものの、福祉の仕事に携わっていることもあって「とりあえずお話をお聞きしましょうか」みたいな気持ちになってしまった。
いやぁ…猛烈な煽りタイトルだけど予想通りと言うか予想以上と言うか…中身もなかなかのものだった。
大阪に来たらええやん! 西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル
- 大阪西成あいりん地区でNPO法人代表を務める作者によるエッセイ。
- 作者は現在まで約1万人もの生活困窮や居住支援の相談にのり、3000件の居住支援を行っている。
- 新型コロナ最前線、生活保護をもらうのに苦労しながら、再起を果たした男性の話、生活困窮者を狙う「囲い屋」「拾い屋」などの怪しい支援団体等、生活保護に関するリアルを語る。
感想
生活保護制度の良し悪しは置いといて。
「生活保護ってどんなものなの?」とか「貧困ビジネスって実際どうなの?」みたいな興味や好奇心を持っている人は読んでみても良い気がする。
……まぁ、それなりに面白かった。
私は親友から色々聞いていたので、すでに知っている情報が多かったのだけど、会社員だったり主婦だったりすると聞いたことも考えたこともないようなエピソードが満載なので、刺激的かも知れない。
私は本当に生活に困ったら生活保護を利用したら良いと思っている。
実際、パート先のの利用者さんでシングルマザーで重度障害の子を育てている方など「この家庭なら生活保護申請しても良いのでは?」と思うことがある。
世の中には真面目に働いていながらも生活保護以下の生活をしている人がいて、そんな場合は「YOU!生活保護申請しちゃいなよ」って思う。生活保護を受給しながら生活を建て直して、社会復帰すれば良い。実際、正しく生活保護を利用している人もたくさんいる。
だけど「生活に困ったら大阪に来たらええやん」は違うと思う。
確かに大阪市の西成区は生活保護で暮らしている人が異様に多いし、生活保護の人でも受け入れてもらいやすい風土があると聞くけれど、日本中から生活保護を受けたい人が集まってこられても困るんですが…って話。
だけど実際、役所の人から「そちらで支援してもらえませんか?交通費はこちらで出します」と作者の運営するNPO法人に問い合せてくることがあるらしい。
「西成行き」への支援も広がっている。
……と言う文章を見た時は二度見してしまったよね。
節子…それ、支援やない。押し付けや。
本当に必要な人が生活保護を受給することに異論はないけど、生活保護に必要な費用は湯水のように湧き出てくるのではない…ってところがスッポリ抜け落ちている。
保護費の4分の3は国が負担するけれど、残り4分の1が自治体負担。自分の自治体で面倒見たくないから、他の自治体に送り出す…なんて酷い話だ。
この本の中で共感できたのは「生活保護受給者に占める障害者の割合は高い」ってところだけだった。生活保護受給者の多くが高齢者であることは知られているけれど、障害者が多いってのはホントそれ。
障害者と言っても重度の身体障害の場合は国が手厚く保護してくれて、そもそも施設で暮らしている場合が多いのだけど、知的障害や精神障害の場合「そもそも自分が障害者だってことも知らなかった」ってケースが多々あるようで、これについては親友のFも同じことを話していた。
生活保護受給者を「働かないクズ」と罵るのは簡単だけど、実は「働かない」のではなくて「働けない」とか「働く能力がない」パターンが多い…って事だ。その場合は支援が必要だと思うし、そもそも論として誰かのサポートがないと生きていけない人達…って感じ。
「世の中を知る」と言う意味では面白い部分もあったものの、個人的には作者の言い分には賛同出来なかった。ただ改めて「世の中には色々な考え方の人がいるんだな」とは思った。