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飛び石を渡れば 一色さゆり 淡文社

『飛び石を渡れば』は茶道月刊誌『淡交』に連載されていた茶道をテーマにした小説。

私は作者、一色さゆりのことをまったく知らないし、物語の内容も知らずに図書館で何気なく手に取ったのだけど、パラパラめくって茶道にまつわる作品だと分かったので「たまには毛色の違う作品を読むのも良いかな」とて、読んでみた。

私は子どもの頃、短期間だけ茶道を習ったことがあって、なんだか懐かしい気持ちになったしまった。

昭和の頃の若い女性は「嫁入り前の花嫁修行」として、茶道、華道、着付け、料理などを習う風習があったけれど、今ではすっかり廃れていて茶道を習うのは、よほどの趣味人。いまや習い事の定番から外れている。

…って考えると『飛び石を渡れば』はなかなかニッチな層を狙った作品だし、よく本の形で出版できたな…とも思う。

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飛び石を渡れば

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ザックリとこんな内容
  • 茶道をテーマにした表題作他11編からなる短編集。
  • 不動産会社に勤める星那は従姉に頼まれて、三年前に亡くなった茶道の先生をしていた祖母の茶道具を整理することになる。
  • 星那は外回りの営業中に見つけた茶道の稽古場に通いはじめ、幼い頃の記憶にある茶道の師範をしていた祖母の「金継の茶碗」を巡って、受け継ぐことの難しさを痛感し……

感想

『飛び石を渡れば』は茶道を習ったことがなくても、茶道に興味がある人ならそこそこ楽しめるのではないかと思う。私は色々と懐かしくて楽しく読ませてもらった。

さて。表題作の『飛び石を渡れば』は茶道の楽しさ云々…って話もそうだけど、それ以上に興味深いと思ったのは遺品整理と歴史的建造物の保存問題。

主人公、星那の亡くなった祖母は茶道の先生をしていて家に茶室があるのだけど「使わなくなった茶室をどうするのか?」ってところが大問題になっている。潰して更地にするのが正解なのだろうけど、茶室を潰してしまうのは忍びないし、そうかと言って誰も使わないし…ってところ。

私が子どもの頃に習ってていた茶道の先生は高齢を理由に教室を閉じ、茶室はあっさり潰されて先生の家が建っていた場所にはハウスメーカーの家が建った。

どんなに価値があるものだとしても「誰も使わない物を受け継いで残す」ってものすごく難しい。茶室を残したいのなら茶道人口を増やせば良いのだろうれけど、茶道人口は減る一方で茶室は必要とされなくなっている。

この問題は茶室に限ったことではなくて、寺社仏閣、歴史的建造物なども同じ問題を抱えている。星那の祖母の茶室がどうなっていくのか…について興味がある方は作品を読んでいただくとして。

『飛び石を渡れば』を本として読む時、表題作は面白かったのだけど、他11編は正直イマイチだった。一応、連作短編形式だけど主人公が変わるし、1つ1つの物語は「ちょっとした小話」の域を出ておらず、正直つまらなかった。

表題作を1つの物語として最初から最後まで綺麗に書き切れば良かったのにな…と残念に思う。

コロナ禍にある今「自宅以外の場所に出掛けて趣味を楽しむ」ってことが難し状況なだけに、久しぶりに茶道の空気に触れることが出来たのは良かったな……と思ったものの、表題作以外はイマイチでなんだか残念な1冊だった。

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白い木蓮の花の下で
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