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映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』感想。

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『ヴィクトリア女王 最期の秘密』はイギリス&アメリカの合作映画。シャラバニ・バスの『Victoria & Abdul』が原作。

ヴィクトリア女王とインド人の従僕、アブドゥルとの物語。恋愛映画…と言われればそうかも知れないし、恋愛映画とも言い難い感じ。何しろ2人はヴィクトリア女王の在位50年の記念式典で出会っている。

一応「ほぼ事実」と言うことになっているけれど、史実とは違う部分もあるらしく、映画公開当時は表現方法等において議論が行われたらしい。植民地と支配する国の物語でもあるので、色々とナイーブな面がありそうだけど、政治的な部分は横に置いてドラマとして観るべき作品だと思う。

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ヴィクトリア女王 最期の秘密

ヴィクトリア女王 最期の秘密
Victoria & Abdul
監督 スティーヴン・フリアーズ
脚本 リー・ホール(英語版)
原作 シャラバニ・バス『Victoria & Abdul』
出演者 ジュディ・デンチ
アリ・ファザル
マイケル・ガンボン
エディー・イザード
ティム・ピゴット=スミス
アディール・アクタル(英語版)
音楽 トーマス・ニューマン
公開 英国 2017年9月15日
日本 2019年1月25日

あらすじ

物語のはじまりは1887年。インド女帝でもある英国のヴィクトリア女王は在位50周年を迎えていた。

英領インドから女王への献上品である記念硬貨を捧げ持つ要員にアブドゥル・カリムとモハメドが選ばれ、二人は英国へ向かう。

宮殿での儀礼を終えようとした時、女王と目を合わすことも禁じられていたにも関わらず、アブドゥルは女王の足に口づけをして女王に強い印象を残した。

女王は39年前に治世最初の首相だったメルバーン子爵を、26年前に最愛の夫アルバート王配を、3年前に寵臣ジョン・ブラウンを、と信愛を寄せた男性たちを次々と亡くしている。

現在は長男のバーティ王太子はじめ子供たちとの関係も悪化し、宮廷の因習と孤独の中にいた。

女王はアブドゥルを自分の話し相手として呼び寄せ、息子のように可愛がり、また『ムンシ』(師、を意味する)と呼び慕うようになる。

アブドゥルは名目上の女帝でありながらインドを訪問したことのない女王に、クルアーンや『最も高貴な言語』であるウルドゥー語の手ほどきをする。

女王は、未知の文化や、慣習にとらわれないアブドゥルに強く惹かれ、旅行に同伴させる等、厚遇する。その結果、二人は周囲の反発を買うようになっていく。

やがてアブドゥルに妻がいたことを知ると、女王は激怒するが、オズボーン・ハウスの別邸にアブドゥルの妻や母を呼び寄せる。

女王はインド大反乱をめぐって、アブドゥルがイスラム教徒寄りの情勢認識を持っていることに気が付く。女王は激高し、アブドゥルを英国本土から追放しようとする。しかしアブドゥルの真心への感謝から、翻意して彼を引き留める。

一方、バーティ王太子も、母である女王にアブドゥルの経歴を知らせ、彼の『卑しい』出自を理由に排除しようとする。

女王は逆に、アブドゥルを叙爵すると言い出してしまう。これには末端の使用人からバーティ王太子まで全員が反発を示す。その様子を見た女王は、孤独を感じるとともに、妥協してロイヤル・ヴィクトリア勲章の授与に留めた。

しかし、高齢の女王はいつしか死に向かっていくことになり……

イケメンは正義

『ヴィクトリア女王 最期の秘密』のメインストーリーである「ヴィクトリア女王がインド人の従僕に肩入れした」と言うことは史実みたい。だけど、多少の味付けはあるようなので、そこは創作として認識しておいた方が良さそう。

作品中での女王は「偏屈な老人」として描かれているのだけど、イケメンのインド人に夢中にっなてしまう。このインド人のアブドゥルは無邪気なのか、女たらしなのか女王の足に口づけしちゃったりするんだもの。「若いイケメンから女性扱いされたら、そりゃあ胸キュンになっちゃうよね」って話。

女王はどこからどう見てみても「おばちゃん」でしかないし、老人と言っても偏屈者で「可愛い」って要素が一ミリもないのだけど、アブドゥルに出会ってからはどんどん可愛くなっていく。

……いやぁ…恋って本当に素晴らしいですね!

女王を演じたジュディ・デンチの演技は映画賞こそ取っていない(ノミネート止まり)けれど、本当に素晴らしかった。

教える者と学ぶ者の絆

女王とアブドゥルの関係に恋心がなかった…と言うと嘘になるかと思うのだけど、性的な意味合いを含む生臭い関係ではなかった気がする。

女王はその身分ゆえに誰からも見上げられる存在。

心がワクワクするような時間がなかったところに、物怖じしないイケメンのインド人が颯爽登場。自分の知らない文化や知識を教えてくれるのだから、そりゃあ素直に楽しかったと思う。

女王はアブドゥルからイスラム教的な考え方や思想、そして未知の言葉を学んでいく。

教える者と学ぶ者の関係って素晴らしい。映画や小説によくある表現として「文字を知らない人に自分の名前の綴りを教える」って場面が多用されるけれど、人間は「新しい知識を教えてくれる人」を好きになりがちなのだと思う。

女王はアブドゥルに対して恋心的な感情を持っていたとは思うのだけど、それだけの関係ではなかったんじゃないかな…と思う。人間が本来持っている知的好奇心って意外と侮れない。

残念なイケメンでなければ…

『ヴィクトリア女王 最期の秘密』は素晴らしい作品だと思ったものの、私は実のところぞっこんハマった…とまでは至らなかった。

アブドゥルが本当の意味でのイケメンだったらハマってしまったと思うのだけど、残念なイケメンでしかなかったのが惜しまれる。確かに顔は良い。笑顔も良い。だけど、それだけの男だ。

自分が既婚者であることを意図的に女王に隠していたし、インド人の同僚や妻に対しての思いやりを感じる場面が全くなかった。

「イケメンには違いないけど、人としてはクソなのでは?」としか思えないような残念なイケメンだったのだ。女王がアブドゥルのような顔だけのイケメンにやられてしまったことが惜しまれてならない。

しかし私は認めざるを得ない。「イケメンは正義だ」ってことを。まぁ…イケメンだから仕方ないよね。私は真っ平ゴメンだけど。

ただ映画として評価した場合『ヴィクトリア女王 最期の秘密』は、なかなかの名作だと思う。役者の演技もそうだけど、美術や背景も素晴らしい。凝った映像と役者の名演技。そしてイケメンを愛でる映画としては素晴らしい作品だと思う。

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