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囚われの山 伊東潤 中央公論新社

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『囚われの山』は八甲田雪中行軍遭難事件をテーマにした作品。

作者の伊東潤は初めて読む作家さんなのだけど、Twitter界隈で「面白い」と言う噂を効いたので予約してみた。

私はそこそこ面白く読んだのだけど、八甲田雪中行軍遭難事件はファンと言うかマニアな人が多いので、ファンやマニアが読むと感想が違ってくるかも知れない。

私の感想は「八甲田雪中行軍遭難事件についてよく知らない人が読んだ」って前提で捉えて戴きたい。そして今回は一部ネタバレを含むので、ネタバレNGの方はご遠慮ください。(1番大事なオチについては伏せてあります)

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囚われの山

ザックリとこんな内容
  • 主人公は『歴史サーチ』と言う雑誌の編集部で働く菅原誠一。
  • 『歴史サーチ』は廃刊の危機に瀕していて、菅原は突破口として企画された「八甲田山雪中行軍遭難事件」を担当することになった。
  • 遭難死した兵士の数が記録によって違うことに気づいた菅原は青森で取材を開始。当時の悲惨な状況を改めて知る。
  • 1回目の特集企画は成功を収め、社長からもう一度、特集を組むこと指示された菅原は、再び青森を訪れた。
  • 遭難死した兵士数の違いにこだわった菅原は遭難事件の半年後に病死した稲田庸三一等卒に注目する。
  • 取材のために地元ガイドの小山内ととともに菅原は冬の八甲田に足を踏み入れるのだが…

感想

八甲田雪中行軍遭難事件と言うと新田次郎の書いた『八甲田山死の彷徨』か『八甲田山死の彷徨』を原作にした映画『八甲田山』を思い浮かべる人が多いと思う。

私は『八甲田山死の彷徨』は読んだ(感想は書いていない)けれど、映画は観ていない。

『囚われの山』の基本的な解釈は『八甲田山死の彷徨』に近いと思う。

『八甲田山死の彷徨』にしても『囚われの山』にしても、あくまでも「小説である」と言う前提で受け止めて戴きたいのだけど「八甲田雪中行軍遭難事件は、軍首脳部が考え出した寒冷地における人体実験じゃないの?」ってところが『八甲田山死の彷徨』と『囚われの山』の共通点。

ただ『囚われの山』はそれに加えてもう1つ大きな秘密を用意していた。これは大事なオチなので、ここでは伏せておくけれど、日本人らしい…と言うか「まぁ…あっても不思議じゃないよね」と言うエピソードで、ちょっと感心してしまった。

『囚われの山』はテーマが重いわりに読みやすい作りになっている。

主人公が現代人で「事件の謎を探る」と言う形で進んでいくので、ガチガチの山岳遭難小説って感じではない。現代と過去を行き来する形で進んでいくし、途中で休憩めいたエピソードもちょくちょく挟まれるので気楽に読むことが出来る。

ただ「そのエピソードはいらなかったのでは?」みたいな部分も多い。

例えるなら『ゴルゴ13』はストイックな殺し屋の物語で、世界情勢と政治と殺しがメインの話なのだけど、ゴルゴ13ことデューク東郷は何故だか必ず現地美女とねんごろになる。

『囚われの山』の場合、主人公の離婚話とか、情事のエピソードはいらなかった気がするのだけど、もしかすると伊東潤のファン層には必要な部分だったのだろうか? ストイックなミステリ小説を目指したのか、気安い娯楽小説を目指したのか訳が分からない。

それはそれとして、ちょっと娯楽に飢えている時期に読んだので、一気読みしてしまったし、それなりに面白かった。

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