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父と私の桜尾通り商店街 今村夏子 角川書店

今村夏子の作品を読むのは芥川賞の候補に上がった『むらさきのスカートの女』以来。今村夏子の作品は初めて読んだ『あひる』もそうだったのだけど、題名とは異なるグロテスクな世界感が特徴。

今回の『父と私の桜尾通り商店街』も題名のホッコリ感に騙されないで戴きたい。ハートフル系の作品ではなくて、微妙にグロテスクだし、微妙に不愉快系。ただし好きな人には、たまらぬ面白さがあると思う。

今回の感想は軽くネタバレが含まれるのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

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父と私の桜尾通り商店街

ザックリとこんな内容
  • 描き下ろしを含む6作収録の短編小説集。
  • 表題の『父と私の桜尾通り商店街』は桜尾通り商店街のはずれでパン屋を営む父と娘がコッペパンをサンドイッチにして並べる事ではじまる物語。
  • 表題作以外に『白いセーター』『ルルちゃん』『ひょうたんの精』『せとのママの誕生日』『モグラハウスの扉』を収録。
  • 題名はホッコリ系だが日常に潜むグロテスク感を浮き彫りにした作品が多い。

感想

実に今村夏子らしい短編小説だった。正直、今回は題名を見て「あれっ? もしかして作風変えてきたの?」と思ったけど、そんな事はなかった。安定の今村夏子。今回も絶妙に気持ち悪い。(褒め言葉)

どの短編が刺さるかどうかは人によって違うと思うのだけど、私が猛烈に嫌な気持ちになったのは『せとのママの誕生日』。

『せてのママの誕生日』は「スナックせと」で働いていたホステス達がサプライズでママの誕生日をお祝いする物語。これだけ聞くと良い話系かと思う訳だけど、ちっとも良い話ではなかった。

ホステス達は全員「スナックせと」をクビになっていて、スナックせとで働いていた頃のことを述懐するのだけど、中でもデベソのホステスのエピソードがクレイジーだった。

デベソであることをコンプレックスに思っいたホステスを「デベソを触るとご利益がある」と売り込む。ホステスはたちまち売れっ子になっていく。

…ここまでのあらすじを読むと「イイハナシダナー」って感じなのだけど、ここからの展開がエグい。このホステス。色々あってデベソを切り取られてしまうのだ。しかもちゃんとした手術ではなく。

デベソを切り取るなんて発想…ちょっと怖過ぎやしないですか? ちなみに、切り取った後のエピソードもなんだかエグい。

収録されている6編はそれぞれにグロテスクな要素が秘められていて、最初は「あれ、ちょっと良い話系?」と思わせておいて「そんなことありませんでしたー」とばかりに手のひらをクルッと返してくるのだ。

今村夏子の作品はハマる人はハマると思う。

ただ、正直言って『父と私の桜尾通り商店街』は『あひる』や『むらさきのスカートの女』と較べると勢いが衰えたような気がしてならない。短編だから仕方がないのかも知れないけれど「ホッコリ話?→違いました」ってワンパターン化しているし、グサッと刺さってくる感じがしないのだ。

もしかすると今村夏子は短編よりも長編向きなのかも知れない。とりあえず次の作品に期待したい。

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白い木蓮の花の下で
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