松本清張は大御所と呼ばれる作家さんなのに、いままでほとんど読んだことが無かった。
随分前に『鬼畜』を読んだくらい。
もともとミステリーというジャンルには、腰が引けてしまっているので、あえて手を付けなかったのだが「読書好き」として、押えておかねばならないかな……とて、唐突に思い立って読んでみた。
砂の器
東京・蒲田駅の操車場で男の扼殺死体が発見された。
被害者の東北訛りと“カメダ”という言葉を唯一つの手がかりとした必死の捜査も空しく捜査本部は解散するが、老練刑事の今西は他の事件の合間をぬって執拗に事件を追う。
今西の寝食を忘れた捜査によって断片的だが貴重な事実が判明し始める。
だが彼の努力を嘲笑するかのように第二、第三の殺人事件が発生する……。
アマゾンより引用
感想
上下2冊もある小説だったが、まったくもって楽しめなかった。
「物語を追う」という行為自体はそこそこに面白かった。お話作りが上手いんだろうなぁ。読者を飽きさせず、グイグイと引っ張って行く力は流石だと思った。
が、イマイチ没頭できなかったのだ。時代背景に入り込むことが出来なかったのが最大の敗因。
「戦争で戸籍が焼けた」とか「浮浪児」とか「成り上がり者」とか、そういう設定が現実のものとして受け止めることが出来なかったのだ。
たぶんドラマだとか映画で観れば面白かったのだと思う。時代背景が色濃い小説って、賞味期限があるんじゃないかと思う。
もっとも時代を超えて読み継がれていく作品だってあるのだから、いちがいに言い切ることは出来ないのだけど。
あとネタバレで恐縮だが「超音波を利用して人を殺す」なんてネタは、その当時では斬新だっただろうが、今となってはレトロの領域。
ミステリー小説って「今・現在」が舞台になっているものが多いので、時間が経つと古臭さが際立ってしまうように思う。
ミステリーが苦手な私でも、そこそこ面白く読んだ桐野夏生や高村薫なんかも、あと20年もしたら古臭いものに変質してしまうのだろうか。
そう思えばミステリー畑の作家さんが、たくさん出てきて次々と消えて行くのも納得がいくし、残っている人達が、やたらと人気者なのも納得がいく。
リアルタイムで読みたかったなぁ……と思った1冊だった。