感想を書いて欲しいとのリクエストを戴いたので数年ぶりに再読してみた。
私にとって松浦理英子という作家を知った記念すべき作品。
初読の時は脳天をかち割られたような衝撃を受けた。そして、今は頬を引っぱたかれたような感じ。力のある作品は時を経ても色褪せないのだ。
ナチュラルウーマン
「私、あなたを抱きしめた時、生まれて初めて自分が女だと感じたの」―二人の女性の恋は、「男と女ごっこ」を拒絶し自分たちに合った性愛を手探りするうちに、捩れて行く。
至純の愛と実験的な性を描き、発表当時から年を追うごとに評価の高まった異色の傑作が、待望の新装版で甦る。
アマゾンより引用
感想
感想と言っても、再読の場合は書くのがとても難しい。かつての自分と、今の自分とでは同じ作品を読んでも違った感想しか持てないからだ。
もちろん、読んだ当時のままの作品も存在するけれど、むしろその方が稀だと思う。
初めてこの作品を読んだ時は、まず主人公が同性愛者であること、SM要素がふんだんに盛り込まれていることに度肝を抜かれた。
私にとって衝撃的なことで、それこそ朝から晩までその事ばかり考えていた。ハマったなんて物ではなかった。もう抜けだせないくらい作品に溺れた。
でも、結局、この作品も本質的なところでは私を満足させてはくれず、中山可穂にへと移行することになる。
『ナチュラルウーマン』はは性愛を描いた作品として優れているし、恋を描いた作品としても素晴らしい。
でも愛には遠いって感じで、そこが私には不満だった。そして、その点においては今でもまったく同じ感想を持ってしまう。
性愛なのか、愛なのか。そこが問題。
性の問題と愛とは切り離しては考えられないと言われるけれど、松浦理英子にしても中山可穂にしても、最終的には切り離してしまっている気がする。
これって、同性愛だからって訳ではないような。
中山可穂の場合は「愛」に昇華したカップルも書いてはいるものの、刹那的に描かれていることの方が圧倒的に多いのだ。
……とは言うものの、この作品のテーマはそこじゃないって事も分かっている。
「ドキドキさせてくれる」って意味では最高の作品と言ってもいい。そして改めて読むと、痛過ぎる昔の自分が蘇ってきて、大声で叫びだしたくなってしまう。
41歳になった今、私は作品の中に出てきた女達の今後の幸せを祈らずにはいられない。
なんだかんだで決して手放すことの出来ない特別な作品。