私。戦争は反対だけど、戦争をテーマにした映画は大好きだ。特にナチスドイツの支配下にあったドイツをテーマにした作品は名作が多い。
『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』は題名を聞いた瞬間に「これは観なければならない」と心に決めた。
題名からしてスパイ映画…しかも女性がスパイだってことは明白。女スパイとナチスドイツ兵の恋。面白くない訳がない。
……と思ったのだけど、期待したほどの作品ではなかった。
偽りの忠誠 ナチスが愛した女
偽りの忠誠 ナチスが愛した女 | |
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The Exception | |
監督 | デヴィッド・ルボー |
脚本 | サイモン・バーク |
原作 | アラン・ジャド『The Kaiser’s Last Kiss』 |
製作 | ルー・ピット ジュディ・トッセル |
出演者 | リリー・ジェームズ ジェイ・コートニー クリストファー・プラマー |
音楽 | イラン・エシュケリ |
あらすじ
物語の舞台は1940年。ナチスドイツが支配するドイツ。
主人公ブラント大尉は、ドイツ革命で帝位を追われた元皇帝ヴィルヘルム2世の警護隊指揮官に任命される。彼は「ドイツ国民からの支持を集めるヴィルヘルム2世の動向を探る」という密命があった。
ブラントは任務に就く前にゲシュタポのディートリヒ警部補から「屋敷内にヴィルヘルム2世暗殺を図るイギリスのスパイがいる」と聞かされる。
ブラントは屋敷で働くメイドのミーケに惹かれ互いに愛し合うようになり、彼女は自分がユダヤ人であることを告白するが2人の気持ちは燃え上がっていく。
ある日、屋敷周辺の村にイギリス秘密情報部の拠点があることを突き止めたディートリヒはブラントに事実を報告する。それを知ったミーケは村に向かい、牧師に扮装した諜報員と接触する。
数日後、ドイツから親衛隊全国指導者ハインリヒ・ヒムラーがドールン館を訪問することが決まり、ブラントはナチスの理念に従うべきか、ユダヤ人のミーケを守るべきか苦悩する。
ヒムラーの訪問に備えて準備を進める中、ブラントはミーケの部屋から硝煙の臭いを嗅ぎ取り、彼女に不審を抱く。
ミーケを尾行したブラントは、彼女が牧師と密会する現場を目撃し、彼女は父と夫を親衛隊に殺されたことを牧師に語り、復讐のためにヒムラーの暗殺を提案する。しかし、密会を終えた後、牧師は親衛隊に逮捕されてしまう。
一方、ブラントとミーケの関係を知ったヘルミーネ・ロイス・ツー・グライツは、彼女を解雇して夫ヴィルヘルム2世に2人の関係を伝える。
しかし、ヴィルヘルム2世は自身も過去に隠し子騒動を起こしていたことを語り、ブラントとミーケの関係を不問にする。
ヒムラーがオランダに到着した後、ミーケがイギリスのスパイであることを牧師が白状し、ブラントは彼女の元を訪れ求婚するが、彼女は「やるべきことがある」と告げて断る。
一方、ヴィルヘルム2世と会談したヒムラーは皇帝への復位を持ちかける。会談終了後、ヒムラーはブラントとディートリヒに、皇帝復位の話はドイツ国内の帝政支持者を一掃するための罠であることを告げる。それを聞いたブラントは、ヴィルヘルム2世の副官イーゼマン大佐に密告する。
ミーケはヴィルヘルム2世にウィンストン・チャーチルの親書を渡し、自身の務めを果たす。親書にはイギリスへの亡命とナチス・ドイツ敗北後の復位が提案されていた。
しかし、ヴィルヘルム2世は提案を拒否し、ユトレヒトに留まること決意。ミーケを脱出させるためヴィルヘルム2世に協力を依頼する。
依頼を快諾したヴィルヘルム2世は心臓発作を装い車を呼び、ミーケを車の中に隠して病院に搬送される。ブラントはディートリヒとゲシュタポ将校を射殺し、屋敷を脱出する。
ミーケは森の中でブラントと再会し、共にイギリスへの脱出を呼びかけるが、彼は申し出を断り病院へと向かう。別れる直前にブラントはミーケに求婚し、彼女はそれを受け入れる。
数か月後、ベルリンに戻ったブラントの元にミーケからの手紙が届く。
セックス。そしてセックス。
女スパイとドイツ兵の恋…どんな悲恋が待ち受けているのかとワクワクして挑んだのだけど、なんとまぁ下品な滑り出しだった。
メイドに身をやつすヒロインミーケと、ドイツ兵ブラントは会っていきなりセックスに突入。ブラントから「脱げ」と命じられるがまま、ミープは服を脱ぎ捨てて身体の関係にもつれ込む。
……まぁ「あの当時のリアルはこんなもん」と言ってしまえばそれまでだけど、ロマンティックの欠片もなかった。
「身体の関係からはじまる真実の愛」も悪くないとは思うのだけど、作品の中で2人が互いの人間性に惹かれるような場面はほとんど描かれておらず「身体が合ったんだね」くらいの印象しかなった。
敵同士の恋が燃え上がるのは定石だとは言うものの、あまりにも酷い。
美男美女だから許される
恋愛描写があまりにもお粗末な作品ではあるものの「ただしイケメンに限る」的な方向性で考えると「アリ」なのだと思う。
ヒーローとヒロインの美男美女っぷりは際立っていて「目の保養」として鑑賞するならアリだと思う。
ドイツ・軍服・美男美女。
……それは映像の世界における大正義。
でも正直「美男美女だったら誰でも良かったんじゃないの?」と思わなくもない。
脇役や時代背景に注目してみる
個人的には低評価でしかない映画ではるあものの、脇役に注目してみると「まぁ、それなりに面白いかな」と思わなくもない。
ナチスドイツがテーマの作品って、どうしてもヒトラー中心に話を作ることが多いのだど、『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』にはドイツ皇帝が登場する。
時のドイツ皇帝、ヴィルヘルム2世は途中まで「困ったちゃん」的な描かれて方をしているのだけど、腐っても鯛…ではなく腐っても皇帝。意外と筋の通った人で、ヒロインミーケが逃亡するのにひと肌脱いでくれるのだ。
また、映像としては登場しないけれど、脇役達の口から語られれるヒトラーの政策は話を聞いているだけでも恐ろしくて、当時のドイツがどんな状況にあったのかを想像させる作りになっていた。
……と、褒めてみたものの『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』は結局のところ1流にはなれない2流映画だと思う。
こんなに美味しい材料を集めて、どうしてこうなった?
『ビハインド・エネミーライン 女たちの戦場 』を観た時も思ったのだけど「ナチスドイツをテーマにした作品は打率が高い」とは言い切れないことを痛感されられた。