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火環 八幡炎炎記 完結編 村田喜代子 平凡社

『火環 八幡炎炎記 完結編』は『八幡炎炎記』の続編。

私は『八幡炎炎記』を読んだ時「これはもしかしたら大作の香りがする。」と書いているけれど、それは私の気のせいだった。

駄作とまでは言わないけれど、絶賛するほどの大作とは言えない。

村田喜代子は私にとって推し作家ではあるけれど、何でもかんでも推せる訳じゃない。むしろ「村田喜代子は大河系には向いてないのでは?」と思ってしまった。

作家が本気出して書いた一族史であり自伝ではあることは間違いないけれど、文学作品としては疑問が残った。

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火環 八幡炎炎記 完結編

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ザックリとこんな内容
  • 前作『八幡炎炎記』に続く村田喜代子初の本格自伝的小説の完結編。
  • 物語の舞台は煙が炎々と天を焦がす製鉄の町・北九州八幡。
  • 複雑な家庭事情のなかで、祖父母や親戚たちの見守りを受け、焼跡に土筆のように逞しく育ったヒナ子は中学生に。
  • ヒナ子は映画と本に夢中になり、脚本家を夢見て上京をもくろむ。
  • ヒナ子を中心とした人々の人生を描く。
  • 仕立て屋の叔父、炭坑で地獄をみてきた堅固な人生観をもつ祖母、奔放な母百合子等が織りなす群像劇。

感想

『火環 八幡炎炎記 完結編』の前編『八幡炎炎記』を読んだ時、私は「主人公はヒナ子という体裁だと思うのだけど群像劇と言っても良いと思う。」と書いているけれど、今回もホントそれ。

主人公の視点がコロコロ変わるのは相変わらずで主人公のヒナ子がメインなのか、父の克美がメインなのか曖昧な感じ。「誰が主人公やねん!」と声を大にしてツッコミたい。

そして何より引っ掛かるのは「八幡炎炎記」ってなってるけど、八幡って場所をまったく描けていないってこと。

三浦綾子桜木紫乃佐々木丸美の作品を読むと、北海道と言う土地を感じる事が出来るし「行ってみたいな」って気持ちになる。宮本輝の作品を読むと「ああ…この作品の舞台は大阪でなければならなかったんだ」って気持ちになる。

しかし前作の『八幡炎炎記』にしても『火環 八幡炎炎記 完結編』にしても、作品を読んで「福岡県に行ってみたい」とはまったく思えないのだ。

戦後の日本を描いていることに間違いなはとは思うのだけど、八幡をはじめ転々とした土地のことはまったく描けていないのだ。あえて描いていかないのもアリだと思うのだけど、だったら題名に持って来るなよと言いたい。

村田喜代子に題名を付けるセンスがないのか、それとも編集サイドの意向なのかは謎だけど、作品を語っていない題名だと思う。

私は村田喜代子の書く作品を愛しているけれど、村田喜代子は長編に向いていない作家さんなのかも知れない。考えてみれば、私が凄いと感じた村田喜代子の作品は短編、中編が中心だった気がする。

文句ばかり書いているけれど、人間の内面描写はお流石な感じ。下品さを出さずに性的なことを語るところや、女の業や情念を描かせたら天下一品。

『火環 八幡炎炎記 完結編』には主人公のヒナ子をはじめ、沢山の女が登場するけれど、どの女の言い分も「まあ、分かる」と納得さられる。

駄作ではないけれど題名の付け方や売り出し方が下手くそ過ぎる。

題名から地名を抜いて、自伝じゃなく「一族の歴史」って部分を前に出して、どうでも良い部分をカットして分割せずに1冊で出せば読み応えのある大河作品になりそうなんだけどな。

  • どうしてこの題名つけた?
  • わざわざ2冊分けた理由は?
  • 作品の本質と関係ない表紙絵つけちゃってるのは何故?

こういった形で作品を発表したのは村田喜代子自身の希望だったのかも知れないし、有能な編集さんがいなかっただけかも知れないけれど、せっかくの原石を残念にカッティングした感が凄い。

八幡炎炎記』と『火環 八幡炎炎記 完結編』、2冊通して残念感しか残らなかったけれど、村田喜代子の次の作品に期待したい。

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白い木蓮の花の下で
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