『よるねこ』は一応、ホラー小説集ということらしい……が、しかし全くと言っても過言ではないほど怖くはなかった。
強いて言うなら「ちょっと不思議な物語」という程度。
私。思うのだけど、ホラーとかミステリーを書く能力と、お話を作る能力は別物ではないかと思ったりする。
たまに「読み物をジャンルに分類する必要はない」って説を目にするが、俗に言うところの「純文学畑」の人が書いたホラーを面白いと感じたためしがない。
また逆も同じで、ミステリーやホラーばかりを書いていた人が書いた純文学も面白くないように思う。
よるねこ
- 姫野カオルコ初のホラー短編集。
- 学校の怪談的な物からそうでないものまで。
- ガチホラー小説を読み慣れている人にはマイルドテイスト。
感想
この作品は決して怖くはなかったが、まったく面白くなかったかと言うと、そうではない。
ホラーと思わずに「姫野カオルコ節を楽しむ」という構えで読めば、そこそこ面白いのだ。
もう使い古されたネタではあるけれど、作者の描く「ひねくれた独身女性」は相変わらず魅力的だったし、1つの話を読み終えた後で、ふと悲しくなる感じも健在で、そういう意味では、ほどほどに面白かったと思う。
中でも私が1番気に入ったのは『心霊術師』のヒロイン、倉庫番の吉田。
作者の作品に登場する女性というのは「どこにもいなさそう」で「すぐそばにいる」ような人ばかりなのだが吉田もまた、そういう女性の1人だった。
傍から見ると、どうしようもないくらい不憫な生き方をしているのに本人が「私はちっとも不幸だとは思っいません」と胸を張っているあたりが、なんともたまらない感じ。
『心霊術師』はラストのオチがとても良かった。まるで童話読んだあとのような余韻が残る。もっとも童話のように手放しで喜ばせてはくれないあたりが、ひねくれているのだけれど。
作者の作品は、かなり好きだけれど短編よりも長編の方が面白いように思う。
短いなら、いっそエッセイの方通いかも。短編だと、独特の技を味わい尽くせないうちに物語が終わってしまうので消化不良に陥ってしまいがちなのだ。次の長編に期待したい。
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