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整形美女 姫野カオルコ 新潮文庫

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新しい容姿を求めて美容整形に挑んだ2人の女の物語である。

1人はブスと言われる顔から、美人と言われる顔へ。もう1人は美人と言われる顔から、ブスと言われる顔へ。

まったく逆方向の整形手術をしたにもかかわらず2人が整形手術の目的は、同じものだというのが面白かった。

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整形美女

ザックリとこんな内容
  • 美容成形をした2人の女性のダブル主人公体制。
  • 1人はブスから美女へ。1人は美女からブスへ。
  • 正反対の考えのもと、整形をした二人の、整形後の運命を描く。

感想

ネタバレになってしまうが2人とも男性にモテたくて整形手術を受ける。

ブスがモテたくて美人に整形するのは、なるほど納得。

美人がモテたくて整形するのは首を傾げてしまいがちだがブスに整形するヒロインの言う「美人像」からすると顔立ちや身体つきが美しいのと、美人は結びつかないのだという。

率直に言うならば、彼女の言うところの美人というのは「男受けする顔・身体」のことのようで、その理論には納得できる所があった。

たとえば、男性は乳房の大きい女が好きなのではなくて乳房を感じさせてくれる女が好きなのだ……と言うような。

姫野カオルコが、この作品で展開している理論は実生活に当てはまることが多かった。

「あぁ、それって分かるなぁ」と思うことが多かった反面「異性にモテる」ということに固執し過ぎているあたりは読んでいて、ウンザリしてしまった。

もちろん「モテる」「モテたい」というのは誰にでもある願望なのだし生きていく上で、けっこう高いポイントを占めているの理解できるが、それだけが人生の一大事ではないだろうに。

ユーモア小説として、わざと大げさに扱っているのだと思うのだがガツガツした雰囲気が漂っていて、あまり笑える代物ではなかった。

私は個人的に姫野カオルコの作品が大好きで、その独特な視点は面白いと思うのだが今回は、ひねり過ぎて面白さを損なっているような気がした。

『処女三部作』とよばれる作品群のように、テーマそのものを追いかけるか、もしくは、話芸だけで引き込めるようなエッセイの方が面白いように思う。

方向性が中途半端なので、どこにも面白さのベクトルが見出せなかったのかも知れない。あるいは、もう少し短ければそれでも面白かったのかも知れないけれど。

「美人とはなんぞや?」という問題定義は面白かったが、それだけに留まってしまったところがオシイと思う1冊だった。次の作品に期待したい。

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