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愛を乞うひと 下田治美 角川文庫

私、個人としてはパワフルで影響力のある1冊だと思った。

しかし文学的に考えると微妙なポジションかかも。この本のテーマに興味がなかったり、幸せな子供時代を送った人にはイマイチ、共感できない小説だろうな……と。

「児童虐待」や「親の愛を知らずに成長すること」なんてのがテーマ。物語のヒロインは、台湾人と日本人の間に生を受けて実の母親から酷い虐待を受けて成長した人だった。

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愛を乞うひと

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母に何度も殺されかけた娘の、復讐と親子の絆を探す物語。

児童養護施設から再び引き取られた10歳の照恵。だが、彼女を待ち受けていたのは、母からの過酷な仕打ちだった。

何度も殺されかけながら、なおひたむきに母の愛を求めるが、その祈りは届かず……。

アマゾンより引用

感想

「いまどき、児童虐待なんて、使い古いされてるいる素材だし」……と感じる人も多いだろうと思う。しかし、私には他人事として読むことが出来なかった。

作品のヒロインは私の小学校時代の同級生のYちゃん、そのものだった。

「まさか、Yちゃんが書いているのでは?」とか「まさか、Yちゃんをモデルにして書いたのではいないかしら?」と思うほどに。

それほどまで、ヒロインとYちゃんは酷似してていたし虐待されて育った子供の描写はリアリティに溢れていたのだ。

Yちゃんも、ヒロインと同じように、傷だらけの少女だった。その上、充分にかまってもらえないせいで、いつも汚い身なりをしていた。

「その怪我はどうしたの?」とたずねても「アパートの階段から落ちた」とか「箪笥の上から物が落ちてきた」といって決して「母親に殴られた」とは言わない少女だった。

それどころか……「私のお母さんって、本当はイイ人なんだよ」とて母親への恨み言なんて言ったことのない少女だった。あまり身なりが良くないからか、学校の教師からも粗略に扱われていた。

私がYちゃんに「怪我の理由」を聞いてはいけない……と知ったのは小学校の高学年になった頃だったろうか。

「そのこと」に気が付いて、ひどくショックを受けたことだけは今でも鮮明に記憶している。

誰しも「親子関係」には、コンプレックスやトラウマがあるものだと思う。

「なにもない」なんて人は、いないのではないだろうか?親だって、人間なのだから完璧ではいられない。

人間が2人寄れば何某かの悶着が起きて当たり前なのだ。たとえ、その関係が親子であったとしても……

だが「激しい虐待」となると「起きて当たり前」だとは思えない。

人間って、愛がなければ生きていけない。「人はパンのみにて生きるにあらず」ってな聖書の言葉は的を得ていると思う。それなのに……愛ではなく、虐待を受けて子供が大きくなるなんて。

大人になってから「虐待を受けて育った」という女性と話をする機会があった。

「私は子供を愛しているけれど、私には母親の血が流れているので私も子供を痛めつけることがあるかも知れないと思うと、恐ろしくてたまらない」……とその女性は苦しそうな表情を浮かべて話してくれた。

私の目には映ったその人は、どこにでもいる優しそうな母親だったのに……大人になってもなお、虐待の傷は癒えないのかと思うと、哀しくてたまらかった。

本の感想からは、横道にそれてしまったけれど、この作品は、そんなことを考えずにはいられない1作だったのだ。

作品の出来、不出来よりも「そこにある事実」が鮮明過ぎて心に痛かった。小説は「作り物」に過ぎないが、作り物という枠組みを越えて訴えかけるようなものが溢れていたように思う。

私は子供を産んだことさえないけれど、すべての子供達が、愛されて育って欲しいと思う。

少なくとも、暴力に怯えることなく育って欲しいと……『愛を乞うひと』というタイトルは、この作品の全てを語っているのだろう。

心に響く、痛い、1冊だった。

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白い木蓮の花の下で
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