47編の小品からなる連作短編集。
少年時代の思い出を書いた短編小説とも、エッセイともつかないような短い話を連ねて1冊の作品に仕上がっている。
イメージとしては「主人公=作者」だが、あくまでも創作である。
あんちゃん、おやすみ
男の子には突破しなければならない関門がある。一人寝、おつかい、メンコ勝負、補助なし自転車、クロールでの25メートル、親友とのケンカ、淡すぎる恋…。
宝物は秘密基地に隠していたあの頃、風の声が聞こえたあの時代、川も杜も空き地もみんな友達だった。
同じ一瞬などない、日々、脱皮していく少年というはかなくも美しい季節を叙情豊かに紡ぐ感動の名品47編。
アマゾンより引用
感想
女性である私が読んでも面白かったけれど、男性が読むともっと面白いんじゃないかと思う。
世代が違うので、子供の頃の思い出といっても時代背景は共有できないのだけど、何故か知っているような、どこか懐かしい。
たとえば「風邪をひいて熱を出す」とか「大事な友達を傷付けてしまった」とか、子供の頃こに誰もが経験しただろう話が含まれているからだと思う。
あまりにも地味過ぎる作品だけど、少しずつ、丁寧に読むにはもってこいだと思う。淡々とした文章だけど、丁寧に書いてあるなぁ……という印象。
たくさんある話の中で私が好きなのは、少年の父親が出てくる話。
少年の父親は何作か登場するのだけど、どれも闊達に描かれていて気持ちが良い。
家族ぐるみの思い出も良いけれど「同性の親との思い出」には、秘密めいた香りがして独特のものがあるように思うのだ。
作品の内容とは関係ないが、解説は谷川俊太郎だった。
解説ってのは作品を誉めたたえるものだと思っていたが、彼の解説は独特だった。作品については少ししか触れず、自分のことばかり書いていたのだもの。
自分の宣伝ばかりばかりするのはどうかと思う。彼が日本生命のCMに出て以来、私は彼のことが嫌いでならない。
凄い詩人かも知れないけれど、金の亡者……という印象が拭えないのだ。
……なんだか話が横道にそれてしまった。
軌道修正など。地味ながらも良い作品だと思う。
ただ、文章の作りが独特なので肌に合わないと読むのが辛いかも知れない。私も最初は少し辛かった。それさえクリアできれば楽しめる1冊だと思う。