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有栖川の朝 久世光彦 文藝春秋

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いつだったか、ちょいと前にあった詐欺事件をモデルにした小説。皇室ゆかりの人間になりすまして、結婚式をしてご祝儀をちょろまかす……てな話。ちゃんと久世節に塗り替えられていたのだけれど、なんだか微妙な味わいだった。

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有栖川の朝

人生は“配役”の問題だ。殿様面の大部屋俳優・安間安間と、馬鹿で酒乱で美貌の三十女・華ちゃん。

二人を拾った老女“川獺のお月さん”は、彼等に王朝の衣装を着せ、ニセ華族さまの結婚でひと儲けをたくらむが…。実在の事件を題材に、可笑しくて切ない人間模様を絢爛豪華な筆致で描き出す、久世光彦最後の小説。 

アマゾンより引用

感想

久世光彦には現代よりも「ちょい昔」が似合うように思う。

古き良き昭和だったり、あるいはもっと遡って大正浪漫だったり。

現代に生きる擦り切れた大人は、時として懐古主義にどっぷりと身を埋めたい時がある。そんな時には久世光彦。疲れた貴方に久世光彦。だけど、舞台が現代だったら、そんな効能も半減なのだ。

正直なところ、まったく面白いとは思わなかったのだけど作者の書く淫靡な世界は相変わらず好きだ。

私は小説の中に出てくる性描写があまり好きではない。

エロティックなものは大好きなのだけど、嗜好の相違と言うか……若い女性作家の書く「セックス万歳」とか「心よりも身体」「セックスが全てが解決する」みたいな感じの文章は大嫌い。

それなのに久世光彦の書く嫌らしくも曖昧模糊としたセックスはとても好きだ。

あえて良かった探しをするならば、ヒロイン(老婆)が、かつて妾をしていた頃の旦那との情交を思い出したりする場面はいいな…と思った。

情熱的な交合ではなくて「あれは、あれで良いものでした」というような、穏かな感じが独特だった。

作者はすでに彼岸の人なので、今更なにを行っても繰言でしかないのだけれど、中途半端な現代調なんて、どうでもいいから、せめてもう1作、懐古主義ムンムンの小説が読みたかったと思う1冊だった。

こ追記。この作品『有栖川の朝』は久世光彦最後の小説になってしまいました。

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白い木蓮の花の下で
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