2006年の夏は、まだ始まってもいないのに「この夏、最高の小説だねぇ」と言える作品に出会ってしまった。
個人的に夏が大好きだ。
そして夏は『スタンド・バイ・ミー』的な少年が成長する物語を読むことに決めているのだけど、この作品は最高だった。
自分自身が小学生の視点まで下がって、いっきに読んでしまう面白さだった。
川の名前
菊野脩、亀丸拓哉、河邑浩童の、小学五年生三人は、自分たちが住む地域を流れる川を、夏休みの自由研究の課題に選んだ。
そこにはそれまでの三人にとって思いもよらなかった数々の驚くべき発見が隠されていたのである。
ここに、少年たちの川をめぐる冒険が始まった。夏休みの少年たちの行動をとおして、川という身近な自然のすばらしさ、そして人間とのかかわりの大切さを生き生きと描いた感動の傑作長篇。
アマゾンより引用
感想
子供が主人公の小説や、児童文学というのは大人が読むには微妙なところで「こんな子供騙しに引っ掛かると思ったら大間違いだぜ…」なんて悪態をついてしまうことが多いのだけど、今回はドップリとハマってしまった。
だが、これはあくまでも「私のツボ」にハマっただけで、万人向けかどうかは分からない。少なくとも動物好きの人ならハマるんじゃないかなぁ……と思う。
夏休みに小学生が地元の川でペンギンを発見して(結果的には捨てペンギンだった)夏休みの自由研究の題材として、ペンギンを観察する……というお話。
いっとき流行った多摩川の「タマちゃん」を彷彿とさせる話の運びだった。
話の面白さもさることながら、子供なりに物事を考えている少年の描き方、知的障害を持った女の子の描写と、その家族の係わり方。微妙な親子関係等が素晴らしく上手いこと描いてあったように思う。
いささか真面目過ぎるところは、どうかと思うけれど、主人公が小学生なので、これもアリかと思ったりする。むしろ、こんなに爽やかに仕上げてくれて、ありがとう…と言いたい。
子供の頃、夏は外で遊ぶのが大好きだった大人に捧げたい1冊。
胸がキュルルンとすること請け合い。久しぶりにガツガツと楽しませてもらった作品だった。