題名が刺激的なので、一瞬ギョッっとしたが「障害者のセックス」をテーマにしたルポタージュ本である。
題名通り「ボランティア」もあれば、障害者を対象にした風俗業者の話などもあり「障害者の性」について、様々な角度から切り込んであった。
セックスボランティア
「性」とは生きる根本――。それはたとえ障害者であっても同じことだ。
脳性麻痺の男性を風俗店に連れていく介助者がいる。障害者専門のデリヘルで働く女の子がいる。知的障害者にセックスを教える講師がいる。
時に無視され、時に大げさに美化されてきた性の介助について、その最前線で取材を重ねるうちに、見えてきたものとは――。タブーに大胆に切り込んだ、衝撃のルポルタージュ。
アマゾンより引用
感想
面白い…と言ってしまうには、あまりにも重い作品だった。「生きるって、こんなに大変なことなんだ」と泣けてきたほどだ。
いままで障害者がどんな性生活を送っているのか……なんて事は考えたことも無かった。セックスが出来ないどころか、自分で自慰をすることさえ出来ないなんて。
成熟した大人であれば、当然感じる欲求なのに「どうしようもない」なんて、あまりにも切な過ぎるではないか。
「童貞のまま死にたくない」あるいは「処女のまま死にたくない」って気持ちは痛いほど分かる。人として生まれてきたからには「体験してみたい」と思うのは当然のことだ。
だが、この作品を読んでみて思ったのは「この問題は一筋縄ではいかない」って事だけである。
もう、重すぎてどうにも良い考えが浮ばないのだ。
障害者の性について、かなりサポート体制が整っているオランダでさえ、障害者が満足した性生活を送れている訳ではないのだ。
どんなに福祉が整っていても、性産業が活発になっても「愛し、愛され」が前提のセックスとなると、どうしたら良いのか皆目見当が付かない。
健常者だって「愛し、愛され」のセックスに恵まれない人もいる。だけど、障害があるってことは、かくもそのハードルが高いのだと打ちのめされずにはいられなかった。
あまりにも残酷過ぎる現実に、どうしていいのか分からず頭を抱えてしまった。結局のところ「それでも人間は生きなくちゃいけない」のだとは思うけれど。
どうしたら良いのかは分からないし、興味本位であれこれ言えるような問題ではないけれど、全く知らないでいるよりも、知っていた方が良い問題だとは思った。
読後はメチャメチャ凹んだけれど、読んで良かったと思える作品だった。