『ぼくは朝日』は北海道の小樽市で暮らす小学4年生男子「朝日」を中心にした、古き良き昭和を描いた物語。
高度成長期の「古き良き昭和」を懐かしむには良い作品だと思う。
ぼくは朝日
小学4年生の朝日を中心に、マイペースな父、母代わりのしっかり者の姉、愛猫のくろちゃん、そして家族を取り巻く個性豊かな人々
ともに笑い、泣き、怒りながら家族の絆は強くなっていく。
アットホームな家族の予想外の結末!あなたの目頭はきっと熱くなる。
北海道・小樽を舞台にした、昭和の風情ただよう、笑いあり涙ありの家族の物語。
アマゾンより引用
感想
主人公の朝日には母がおらず、父と10歳年上の姉と暮らしている。
朝日は気持ちが高揚するとリコーダーを吹く癖があり、動物が好きな心優しい少年。優等生ではないけれど、悪い子でもない。
母親がいない分、姉に対して遠慮があったり、友達に対しても一般的な10歳よりも相手の気持ちを汲む事が出来る感じ。
この作品。オリンピックの名残があって、カラーテレビがもてはやされた古き良き昭和の生活が生き生きとしたタッチで描かれている。演技の達者な子役を起用して映像化したら素敵な物が出来そうな予感。
素直に良い話だと思う。
ただ、こんなに褒めておいて書くのもアレだけど、なんか物足りない。『田村はまだか』で見せてくれたキレが無い。
登場人物達がみんな良い人で、ハートフルストーリーなだけに、キレッキレな感じにするのは難しかったのだとは思うのだけど、それにしても普通過ぎて残念だ。
読み物としては充分なレベルだと思うのだけど、期待値が高かった分「えっ? これだけ?」みたいな気持ちになってしまった。たぶん、作者の持ち味である「驚き」の部分が足りなかったのだと思う。
一応、最後にちょっとしたネタを仕込んであったのだけど「えぇぇっ!」とビックリするほどの物ではなかったのだ。「えっ…ああ…そうなのね」くらいのものでしかなくて、どうにも締まらない感じがした。
ただ、前回読んだ『少女奇譚 あたしたちは無敵』の時とガラッっと作風を変えてきたことは評価したい。
朝倉かすみは色々な路線を書いてみたいタイプの作家さんなのだなぁ。そして、それなりに仕上げてくるところは凄いと思う。
ただ、個人的には『田村はまだか』とか『わたしたちはその赤ん坊を応援することにした』のような、人間の小狡いところとか、嫌なところを書いた作品の方が好みだ。
ただ、これについていは人によって違うだろうから、あくまでも私の好みってことで。
今回はあまり好みではなかっのだけど、次の作品に期待したい。