私。真梨幸子の書くイヤミス(読んで嫌な気持ちになるミステリー)が大好きだ。
イヤミスなんて読んでもまったく為にならないし、場合によっては楽しいよりも本気で嫌な気分になるだけなのにそれでも読まずにはいられない。
怖いもの見たさと言うのだろうか。作風を知っているのにどうしても読みたくなってしまうのだ。
ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで 万両百貨店外商部奇譚
ザックリとこんな内容
- 連作短編形式。
- 主人公は万両百貨店敏腕外商マン(女性)。「人殺し以外は何でもします」がコンセプト。
- 題名の通り「ゆりかご」から「墓」まで揃えるのが外商の仕事。
感想
今回は題名の通り、老舗百貨店の外商がテーマ。百貨店の外商と言うと、以前読んだ『カウントダウン』にも登場したけれど、今回はガッツリと百貨店の外商話を楽しむ事が出来る。
私は百貨店の外商なんて縁のない人間なので、お仕事小説としても楽しかった。
私は百貨店で買い物をする事がないせいか、百貨店に対して並々ならぬ憧れを持っている。
百貨店には庶民の浪漫が詰まっているのだもの。たとえ同じ商品を売っていたとしても百貨店にはイオンにはない夢がある。
話が脱線してしまったけれど、今回の作品は連作短編形式。
作者が得意とする手法だ。1つ1つの話が面白くて一気に読み進める事が出来るのだけど、残念ながらこの作品はいささかまとまりに欠ける気がしてならない。
イヤミスなのだけど、そこまで嫌な気分にならなかったと言うか、予定調和的と言うか。「なんじゃこりゃ~」と言う驚きを感じる事が出来なかった。
「イヤミスが読みたい」と言う人にはあまりオススメ出来ない感じ。『ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで 万両百貨店外商部奇譚』は、いつもの真梨幸子作品からすると「嫌な感じ」ではないのだもの。
ただ「お仕事小説を読みたい」と言うのであれば、それなりに楽しめると思う。もちろん、この作品はイヤミスなので読後感の保障は出来ないけれど。
それなりに面白かったけれど、次はガッツリ長編を読ませて欲しいな…と思った。