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Railway Stories 大崎善生 ポプラ社

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題名からすると「鉄道にまつわる短編集」ってことなのだと思うのだけど「それほど鉄道は関係無いのでは?」と言う話も沢山ある短編集。

私的分類から言うと「こっ恥ずかしい系」のお話が満載。

なんだかんだ言って、大崎善生の作品は好きなので読んで良かったと思ったけれど、面白かった作品と、そうでない作品との差が大きい作品集だった。

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Railway Stories

終着駅は記憶の中――
車窓の向こうに揺れる
切ない記憶の物語。

切ない青春時代の恋、家族の原風景、父の死、
様々なテーマで描かれた十篇の珠玉短編集。

アマゾンより引用

感想

個人的には村上春樹ちっくな「パッっとしない知的な若者が、おおよそ普通の人間とは思えない妖精のような美少女から一方的に好かれて、いたす話」の類は、正直戴けなかった。

まぁ…好きな人には好きだと思うのだけど、あれはある種の「萌え小説」と言うか「妄想小説」だと思う。

決して否定はしないけれど読後に「……で。だから、どうした?」と突っ込まずにはいられない。

作者がこのパターンや、あるいはこのテのヒロインが好きなのは承知しているけれど、短編だと雰囲気が濃くて胸やけしそうだった。

一方「やりきれない過去を振り返る話」の類は好みだった。

大崎善生は過去を描くのが上手な人だ。過ぎ去った出来事を悔いてみたり、あるいは必要以上に「あれは、こういう事だったのだ」などと結論づけたりせず、慈しみの目でもって振り返る姿勢がとても良い。

20代の頃は、このテの話は苦手だったけれど、30代も後半になった今、このテの話にはよっと弱い。多少なりとも自分自身と重なるところがあると、特に。

いっとう気に入ったのは『確かな海と不確か空』。

主人公が禁煙する話で、もしかしたら主人公は作者自身を投影しているのかも。私は煙草を吸わないので、煙草を吸う人の気持ちは分からないし、何がどう…ってことも無い作品で、上手く説明出来ないのが残念だけど「なんか良かった」のだ。

しかしながら、この本の最大の魅力は装丁にあると思う。

決して「素敵なデザイン」って訳ではないのだけれど、字体から、背景のイラストから、何から何まで「大崎善生」って感じがするのだ。

この本の装丁をした人は作者の作品が好きなのか、それとも単に作品の雰囲気を感じ取る能力が強いのか。大崎善生の書く作品のイメージと、あまりにも合致し過ぎていて感心した。

色々と思うことはあったけれど、なんだかんだ言って、それなりに楽しめた1冊だった。

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