この作品の題名を見て昭和の読書好きなら「あれ? この題名どっかで見た事があるような…」と思ったのではなかろうか。
そう、宮本輝の名作『青が散る』と、なんとなく被る。
全く偶然なのか、それとも作者が宮本輝をリスペクトしたのか理由は分からない。しかしこの作品も『青が散る』も方向性は違うし全く似てはいないけれど青春小説である。
「青春=青」ってイメージは日本人の心に深く刷り込まているのかな…なんて事を思ったりした。
今回はネタバレ満載でお届けします。
ネタバレ苦手な方は遠慮戴きたいのだけれど、今回はちょっと特殊でネタバレしないと感想が書けない…と言うか、出版社のHPにも、アマゾンの解説にも大事なあらすじが書かれていて、真っ白な状態で読むのは難しい作品であるとだけ先に書いておきます。
青が破れる
この冬、彼女が死んで、友達が死んで、友達の彼女が死んだ。
ボクサーになりたいが、なれない青年・秋吉。夏澄との不倫恋愛を重ねながら、ボクシングジムでは才能あるボクサー・梅生のパンチとのスパーリングを重ねる日々。
ある日、友人のハルオに連れられハルオの恋人・とう子の見舞いへ行く。ハルオに言われその後はひとりでとう子のもとを訪ねることになるが……。
アマゾンより引用
感想
主人公はボクサーになりたい青年。彼の親友、親友の恋人、そして彼の不倫相手の人妻。この3人が死にます。そう言う小説です。
いやぁ…ビックリしたのなんのって。こういうスタイルって新しいんだろうか?
それほど長くもない作品の中で…しかも現代日本を舞台にして作品の中で、3人もの人が死ぬのに3人が3人ともアッサリと死んでいて、不自然なんてもんじゃない。リアリティゼロと言っても良い。
これは「あえて」を狙っての事なのだろうか? 私には作者の意図するところが全く理解出来なかった。
ちなみに死因は三人三様。親友は自暴自棄になって交通事故死。親友の恋人は登場した時から不治の病。不倫相手の人妻は自殺。
一般的に考えると、1つの作品で1つしか使わない死因だと思うのだけど、抱き合わせてくるあたりの度胸は買いたい。
だけど、面白かったかと言われると、正直ちっとも面白くなかった。ただ、次々と人が死ぬので読んでいて飽きる事は無かった。
何なんだろうなぁ…この作品。文藝賞受賞作って事らしいのだけど「審査員大絶賛」とのこと。
確かに今までにない作風ではあると思う。
とりあえず私は面白いとは思わなかったけれど、作者がこれからどう化けるのか興味がある。とりあえず次の作品が出たら必ず読もうと思う。