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老乱 久坂部羊 朝日新聞出版

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久坂部羊は初挑戦の作家さん。

久坂部羊は医師として働いていたとのこと。もしかした現在は専業作家かも知れないけれど、外務省の医師として活躍した後、在宅診療に力を注いでいたらしい。

題名から予想出来るかと思うけれど、認知症老人の介護をテーマにした作品だった。

私は認知症老人の介護は経験が無いけれど、父が50代で肝炎から脳炎を発症して認知症と似たような状況に陥った経験がある為、作品内での出来事がリアル過ぎるくらいリアルに感じられて、読んでいてストレスを感じるやら辛いやらだった。

老乱

在宅医療を知る医師でもある著者が描く迫力満点の認知症小説。

老い衰える不安をかかえる老人、介護の負担でつぶれそうな家族、二つの視点から、やっと見えてきた親と子の幸せとは?

現実とリンクした情報満載の新しい認知症介護の物語。

アマゾンより引用

感想

この作品。一応小説の形を取っているけれど、限りなくルポルタージュに近いと思う。「認知症老人介護あるある」みたい感じ。

「介護あるある」なんて書くとノリが軽くてなんだけど。認知症の父親の行動は認知症介護をしたことのある人なら「あるある」だし、私の父もほぽ同じような経路をたどっている。

物忘れ、徘徊、迷子、妄想、暴力…この作品に書かれていることは全部本当のことだ。好き嫌いはさておき、誰でも50歳過ぎたらとりあえず読んでおいと欲しいと思う。

自分の親や配偶者がそうなるかも知れないし、もしかしたら自分自身が当事者になるかも知れないのだから。

作者は現場を見てきた人なだけに、ノンフィクションかと思うほど細かなところまでリアルだった。

認知症の老人もそうだけど、介護する家族の心の動きや人間関係など「分かるわぁ」とか「よく聞くわぁ」って感じだった。

そして介護の理想と現実も。認知症の専門医が主人公夫婦に色々なアドバイスをしていく場面があるのだけれど、その医師の口からも「きれい事というか。机上の空論みたいになってしまって、あまりお役に立たなかったでしょう」と言う言葉が出ているのが印象的だった。

そうなんだよね。理屈では分かっていても、暴言吐かれて好き勝手されて、それでも面倒みなきゃいけない…となると、穏やかな心ではいられないもの。

ラストはそれなりに良い感じにまとまっているけれど、なかなかこうはいかないのだろうな…とも思う。

父は作品に出てくる認知症老人と近い最期を迎えたし、私も家族もギリギリのところで踏みとどまる事が出来たけれど、それは「介護期間が短かったから」だと思っている。

あの生活が何年も続いていたら、私はヤバイことをしていたかも知れない。

読んで楽しい作品ではないけれど「いつか通る道」として読んでおくと役に立つかも知れない。

50代以上の方にはオススメしたい1冊だ。

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