ダイエットって、多くの女性が通る道ではないかと思う。垣谷美雨は作品の題材を探すのが上手いし、手堅く消化していくあたりは職人技だと感心する。
『あなたのゼイ肉、落とします』だなんて、なかなか上手い題名だと思う。
あなたのゼイ肉、落とします
- ダイエットアドバイザー大庭小萬里を中心とするダイエットにまつわる短編集。
- 大庭小萬里はマスコミには一切登場しない謎の女性だが、彼女の個別指導を受ければ、誰もが痩せられるという設定。
- 「ダイエット出来ないのは生き方とか心のありように問題があるので、それを解決していきましょう」と言うところがコンセプト。
- ダイエットをする事で相談者の人生が変わっていく。
大庭小萬里にダイエットの個別指導を依頼してくる依頼者がそれぞれ主人公になっていて、以前読んだ『あなたの人生、片づけます』と同じ形式。
感想
『あなたの人生、片づけます』と路線は全くおなしだけれど、この作品の方がずっと好みだった。
「そんなに上手く訳ないんじない?」と言うツッコミはこの際、横に置くとして。
「人間っていいな」な感じとか、読後感の爽やかさが素晴らしい。軽めでササッっと読めるタイプの作品なので、ガッツリ系が読みたい人にはオススメ出来ないけれど、万人受けする作品だと思う。
私が特に気に入ったのは10歳の男の子が主人公の話。
母子家庭で母親がちゃんとした食事を用意出来ない事が原因で肥満になっていた少年に大庭小萬里が「自分で作りなさい」と料理を教える。
なんだか色々と上手く行き過ぎな感じではあったけれど、若い人が良い方向に進んでいく話は読んでいて気持ちが良い。
逆に全く好きになれなかったのが、交通事故で一時的に記憶喪失になった男性の話。
ネタバレになっちゃうので核心に触れる部分が書けないのが残念なのだけど、解決方法にしても、解決していく過程にしても主人公男性のしてきた事を思うと「え~。ないわぁ~」と思ってしまった。
良い話としてまとまってはいるものの、一歩間違えば…と思うと微妙に喜べなかったし、そもそも主人公の男性を1ミリも好きになれかった。
それにしても、この作家さんは「今の世の中」を描くのが上手い人だな…と感心する。
子育て、断捨離、ダイエット、老後の資金……。
巷で話題になっている事ばかりがテーマになっていて、作品への盛り込み方がとても上手い。今後も是非、作品を追っていきたいと思う。