はじめて読んだ作品『ニライカナイの空で』に感激したので、続けてもう1冊。
こちらは大人を主人公にした3つの作品が入っていた。表題作の他に『海の空、空の舟』『鯉のいた日』など。「そこそこ面白かった」という印象を受けたが。
『ニライカナイの空で』ほどの勢いがなく、言い訳めいた大人がけっこうウザったい感じだった。
雨をみたかい
ためらいの雨は降るがままに。霧のなか一歩、踏みだせばいい。迷いと諦めの日々からささやかな希望をつむぐ、気鋭の珠玉小説集。
特別書下ろし作『雨を見たかい』に、小説現代新人賞のデビュー作を収録。
アマゾンより引用
感想
表題作は帰郷する男が、短い時間故郷で母親と過ごした話を書いてあったのだが、これはいただけなかった。
田舎の雰囲気は好きだし、上手くかけていたが、主人公がまったく好きになれなかったのだ。
そしてラスト近くで「主人公が高校生の頃に書いた小説」がを読まされたときは、唖然としてしまった。
もちろんプロの作家さんが書いているのは分かっているが、読んでいるものの心情としては「おいおい。そんなもん読ませるなよ」と思わずにはいられない。
プロなんだから。素人の書いたもの……たとえ作中作でも頼るのはマズイでしょう。
『鯉のいた日』は、地味な話だったがとてもよかった。
あまりかまってやれないけれど、家族を愛するお父さん。息子が釣ってきた鯉を風呂場に放すお母さん。父親に自分が鯉を釣った瞬間を熱く語る息子。
兄に負けたくない妹。サラリーマンドリームというか、ある意味理想の家族だろう。「善良な人間って素敵だなぁ」と思った。通勤電車で読むと最高だと思う。
『海の空、空の海』は少年が大人になる瞬間書いたお話。これも良かった。少年って、こうやって大人になるものなのなのだろうか?
すごいエネルギーだ。少女が大人になるときとは、また全然違った感じがした。生き物の個体という観点からも、男と女は違うのだと、なんとなく思ってしまった。
3作品中、2作があたりだったので、まずまず良かったけれど。このラインナップだったら『海の空、空の海』を表題作にしちゃうなぁ。私だったら。
もっとも、私の個人的な好みが万人に受けるとは限らないのだけれど。まずまず面白い1冊だった。