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薄暗い花園 岩井志麻子 双葉社

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「恐い話」ばかりを集めた短編集だった。夏になるとお昼の番組枠で放送される『あなたの知らない世界』のノリに少し似ていて「恐い話」と言っても、そのほとんどは「霊」にまつわるものだった。あの世とこの世は陸続き? そんな印象。

しかし正直なところ、恐怖なんてこれっぽっちも感じなかった。小学生か、せめて中学生の頃だったら、けっこう恐がっていただろうけれど。子供って生き物はたいて恐い話が好きなものだ。(極端に嫌う子もいるけど)夜中、1人でトイレに行けなくなるくせに、わざわざ恐い話をせがんだりするのだ。子供が恐い話を好きなのには、心理学的に、ちゃんと理屈があるのだが本の内容からかけ離れそうなので割愛する。

子供の頃、父に「霊とか恐くないの?」と尋ねたら「そこまで人に恨まれるようなこともしないし、人殺しもしないからお父さんには関係ないし、恐くない」って言葉が返ってきて「お父さんって霊が恐くないんだ。すごいなぁ」と思った覚えがあるが、自分が大人になってみると、父と同じ意見になっている。オカルトマニアならまだしも、いっぱしの大人を「霊がとりつく」という単純なエピソードだけで恐がらせるのは無理なのではなかろうか。ましてや「自分の殺した人の霊がとりついていた」というオチが付いてたりすると「自分には関係ないしな」と思ってしまうのだ。

「人を殺して霊にとりつかれる」よりも「自分の中に人殺しをしてしまうような衝動や、残虐な心が潜んでいる」ということの方が、よほど恐い。つきつめていけば「自分は人殺しなんてしないから霊がとりつくなんて関係ない」という図式は成り立たないのだが、短くて単純な話を読むのに、そこまで考えたりはしないだ。

恐くもなく、面白くもなく、いまひとつな1冊だった。

薄暗い花園 岩井志麻子 双葉社

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