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映画『教皇選挙』感想。

5.0
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2025年4月22日、ローマ法王であるフランシスコ教皇が亡くなった。ローマ法王がなくなると「コンクラーベ」で次の法王が選出される。

リアルタイムでコンクラーベが行われる時にコンクラーベの映画が観られるだなんて、なんと言う僥倖! 「これは劇場で観るしかないでしょ?」ってことで久しぶりに映画館まで足を運んだ。

ちなみに今回のコンクラーベ(リアルの方)ではアメリカ出身のロバート・フランシス・プレボスト枢機卿が法王に選出され「レオ14世」となった。なおレオ法王も『教皇選挙』をご覧になったとのこと。

今回は物語のオチとなる大切な部分のネタバレを含む感想になるのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

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教皇選挙

教皇選挙
Conclave
監督 エドワード・ベルガー
脚本 ピーター・ストローハン
原作 ロバート・ハリス
出演者 レイフ・ファインズ スタンリー・トゥッチ
ジョン・リスゴー イザベラ・ロッセリーニ
音楽 フォルカー・ベルテルマン
公開 日本  2025年3月20日

あらすじ

ある日、カトリック教会のトップにしてバチカン市国の国家元首であるローマ教皇が、心臓発作のため突如として急死する。

イギリス出身でローマ教皇庁首席枢機卿を務めるトマス・ローレンス枢機卿は枢機卿団を招集し、次のローマ教皇を選出する教皇選挙(コンクラーべ)を執行することとなった。

100人以上の枢機卿がコンクラーヴェが行われるシスティーナ礼拝堂に集まる中、有力候補者として4人が注目されていた。

  • アメリカ出身でバチカン教区所属、リベラル派最先鋒のベリーニ枢機卿
  • カナダ・モントリオール教区所属、穏健保守派のトランブレ枢機卿
  • ナイジェリア教区所属、初のアフリカ系教皇の座を狙うアデイエミ枢機卿
  • イタリア・ベネチア教区所属、保守派にして伝統主義者のテデスコ枢機卿

そんな中、メキシコ出身で昨年に前教皇によって新たに任命されたばかりのアフガニスタン・カブール教区のベニテス枢機卿が開始直前に到着する。

世界各国から集まる枢機卿たち。彼らは一人ひとりが敬虔な信仰者であると同時に、組織を支える重責を担うリーダーたちでもある。選挙の舞台となるのは外界との連絡を断たれたシスティーナ礼拝堂。

選挙が進むにつれて票はある候補に集中していくが、それと同時に内部には静かな動揺が広がり始める。神の導きを求めるはずの儀式の中で人間としての迷い、後悔、そして思わぬ過去の影が浮かび上がる……

キリスト教信者でなくても楽しめる

『教皇選挙』はキリスト教信者でなくても十分楽しめると思う。若いイケメンも美女もでてこなくて、出演者は「ほぼオッサン」と言って良いような布陣なんだけど、このオッサン達がめちゃくちゃカッコイイ!

オッサン好きの方は是非、年齢を重ねたオッサンの格好良さに脳天をぶち割られたら良いと思う。インテリスキンヘッドのオッサンが大好物な私はスタンリー・トゥッチを確認した瞬間、心の中でガッツポーズを决めたよね!

男だらけの作品だけど背景や音楽が華やかなので地味な感じがしないので安心して観ていただきたい。そもそも枢機卿達の着ている法衣からして綺羅びやか。そしてやっぱりイケメンは年を重ねてもイケメンってことだ。年を重ねた男の色気、とくとご堪能あれ。

フェミニズムと人種差別

『教皇選挙』では社会的な問題も織り込まれている。特に興味深かったのがフェミニズムと人種差別。

カトリックでは女性は教皇なれない。そもそも女性は「シスター」って立場で奉仕するものの、あくまでも男性をサポートする位置づけ。昨今の世界の風潮とは随分違って旧態然とした世界観。そんな中『教皇選挙』ではシスターが発言する場面がある。

「私達はいないもの…とされていますが」と前置きして語るシスターの言葉はなかか強い。そして、たぶん…だけど実際のカトリックの世界だと女性の立場はそこまで強くないんじゃないかな~と思うだけに「なるほど。昨今の風潮に配慮した感じですね」と感心した。

一方で人種差別的なところの描かれ方については「ですよね~」と苦笑いを禁じ得ない。

『教皇選挙』は基本的にローマ法王候補達はそれぞれ問題があって1人ずつ候補から外れていくのだけど、過去に女性(シスター)と性的関係を持ってシスターとの間に子どもを設けていた枢機卿がいた。で、その枢機卿は黒人…って設定。

人種差別的な界隈で「黒人は性欲が強い」ってところはよく言われる話。「下半身クズのポジションに黒人を当ててくるんだ!」と素直に驚いた。

下半身だらしない選手権をしたらフランス人とかイタリア人なんかも上位入賞しそうなのに、そういう役どころは黒人にしちゃうあたり、なんだか世界の本質を垣間見た気がした。人種差別意識は根強く残ってるよね…って話。

みんな違ってみんな駄目

さて。教皇候補達。みんな違ってみんな駄目。どいつもこいつも、それなりに脛に傷を持つ身の上。聖職者と言っても完璧じゃないんだなぁ~ってところは平々凡々と生きてきた人間からすると、ちょっと安心感がある。

そしてコンクラーベを仕切るロレンスとロレンスの親友のベリーニの関係がとても良かった。コンクラーベの仕切りを任されたロレンスはどちらかと言うと「自分は前にでたくないでござる」ってタイプの人。そして親友のベリーニを推している。

だけど結果的にベリーニは脱落。紆余曲折を経てロレンスが候補者に上がってしまったことで2人の関係に亀裂が入る時があったものの、最終的には「やっぱ、俺達ズッ友だよな」と確認しあう流れは最高に良かった。

宗教の世界。それも未婚でずっと一緒に仕事をしてきた同僚ともなれば、その絆の濃さは想像つく訳で。なんかこぅ…熱い物が込み上げてきた。

そして衝撃のラスト

さて。この『教皇選挙』。正直、最初の時点で「誰が教皇になるのか?」ってことについては感の良い人なら想像出来たと思う。そう…ヒーローは遅れてやってくる。それが王道の物語ってもんだ。

「遅れて登場したベニテスが法王になるんだろうなぁ」ってことは多くの人が予想したと思う。私もそう思ってた。だからベニテスが選出されたことに異論はない。だけど。その後は予想していなかったのでビックリ仰天した。

物語の最初の頃から「ベニテスが病院に行く予定で云々」みたいな話は仕込まれていたので、私は「実はベニテスは不治の病で余命いくばくも無い…みたいな感じなのかな? コンクラーベは終わったけど、また次のコンクラーベがほどなく開催される未来が設定されている…とか?」などと思っていた。

しかし『教皇選挙』のラストは私の予想の見事に裏切ってくれた。ベニテスが両性具有だったなんて想像もしなかったよ!

ご存知の通りカトリックにおいて女性は司祭になれないし、もちろんローマ法王にもなれない。ベニテスは自らの性を偽って司祭になったのではなくて、ずっと男性だと思って生てきたのに、盲腸の手術を受けたことで「あれ? あなた子宮もありますよ」と指摘された…って設定。実際、この類の事例は稀にあるみたい。

さて。このコンクラーベを仕切っていたロレンスは途中、自分が法王になる覚悟を决めたとは言うものの本質的には前に出たくないタイプ。さらに言うなら「神の御心に従って正しく法王を選出せねば」と言う使命感を持ってコンクラーベに挑んでいたので、ベニテスが法王に選出されたことを素直に喜んでいる。

それなのに両性具有者であることを知るとか酷いにもほどがある。いっそ知らなければ心安らかに過ごせただろうに。ロレンスの苦悩は終わらない…「俺達の戦いはこれからだ!」的なある意味ズッコケそうになるラストだった。

「新しいローマ法王! 実は女性(正しくは両性具有)でした」だなんて予想の斜め上過ぎる。『教皇選挙』は一見真面目そうな作品に見えて笑える要素を含む攻めた内容だと思う。

2025年はまだ5ヶ月しか経っていないけど『教皇選挙』はワタシ的今年度ナンバー1映画になるかも知れない。劇場まで足を運んだのは大正解だった。

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