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傲慢と善良 辻村深月 文藝春秋

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辻村深月は前回読んだ『嘘つきジェンガ』がイマイチ好みじゃなかったので「辻村深月はもう読まなくていいかな」って気持ちになっていたのだけれど『傲慢と善良』は評判が良さそうなので「ちょっと読んでみようかな」と手に取ってみた。

……結果。予想外に面白かった。

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傲慢と善良

ザックリとこんな内容
  • 西澤架は婚活の末、結婚することになったのだが、婚約者である坂庭真実が姿を消してしまう
  • 架は真実の居場所を探すため、彼女の「過去」と向き合い、そして自分自身についても見つめ直すことになる

感想

小説…言うよりも生き方的なノウハウ本的な要素が強い作品だと感じた。『コンプルックス』とか『タカラモノ』とノリが似ている気がした。文学性は低くて「伝えたいこと」が前に出ている印象。今までの小説には無い形だけど、これはこれで面白い。

『傲慢と善良』は婚活アプリで知り合った男女の女性が結婚式を前に失踪。男性が婚約者を探す…と言う、一見するとミステリ風の物語。ただし婚活云々、ミステリ云々は作品の核ではないと思う。

人間の生き方や姿勢などを男性視点、女性視点で考え直すための作品になっていた。

  • 結婚とは何か?
  • コミュニティに生きるとは?
  • 人間の価値はどこにあるのか?

……などなど。物語の出だしは「婚活が上手くいかない人って、自分を過大評価し過ぎている」みたいなところに終始していて「なるほど…婚活指南書ですか?」と読み進めていたのだけれど、女性を探す旅の中でもっと大きな視点へと発展していく。

冷静になって読むとはた迷惑なカップルだし、ツッコミ要素満載だけど男女とも、様々な人と出会う中で自分の過去と向き合うことで成長していくところは好感が持てた。そして私自身、思い当たるところや考えさせられる切り口もあった。

『傲慢と善良』を他人事として読めるのは、よほど自分に自信がある超エリート。そうじゃなれければ、よほどのアホだと思う。現代社会の問題に切り込んだ作品だと感じた。特に若い人に読んで欲しい作品(高2の娘にも勧めた)

贅沢を言うのであれば作者が伝えたい本質を「文学」まで高めてくれたら最高なんだけどなぁ。ふんわり良い感じで終わるのは素敵…と言えばそうなのだけど、心に残るかと言うと、そうじゃないのが残念ではある。最近は映画化してもそれなりに流行りそうな作品が増えているな~と思う反面、誰かの人生に爪痕を残すレベルの作品が減っている気がする。

とりあえず辻村深月の次の作品に期待したい。

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