桜木紫乃の作品を読むりは久しぶり。前回読んだ『ブルースRed』があまりにも私の好みからズレていたので「もう2度と桜木紫乃の作品は読まない」と思ったのだけど、ちょっとした気の迷いで手に取ってしまった。
『ブルースRed』の時に感じたコレジャナイ感は無かった。無難な短編集…言った印象で悪くはなかった。読んでいてちょっと苦しくなるような1冊ではあった。
青い絵本
- 表題作ほか全5話収録した短編集。テーマは絵本。
- 作家、編集者、セラピスト、書店員など様々な人達が絵本を通して自らの人生に向き合っていく。
感想
『青い絵本』は絵本をテーマにした短編集だと思っていたけれど「作家と言う仕事のか過酷さ」がテーマの短編集だと感じた。
私は小説家ではないけれど、子どもの頃から本が好きで本と共に生きてきただけに小説家が小説を書き続けていくことがどれだけ大変なことなのかは想像できる。デビューして1つの作品が平積みになったとしても、それっきりで続かない人もいれば、何冊か評判の良い作品を生み出すことが出来たとしても、ある時期からパタリと姿が見えなくなることもある。
作者の桜木紫乃にしても「桜木紫乃の書く小説はどれもこれも面白い。一生ついていく」と思った時期があったけれど、残念ながらピーク時を思えば明らかにパワーダウンしている。私の勝手な想像だけど、桜木紫乃自身が感じている作家として生きていくことの困難さが『青い絵本』には込められている気がする。
小説家「桜木紫乃」を理解する上で重要な作品だと思った反面、純粋に短編集として考えると「それほど面白くないな」と思った。1話ごとのエピソードが感動的な訳でもなければ、どれもこれも似たような雰囲気でメリハリが無い。
そしてもう1つツッコませて戴くと絵本は大人のセラピー道具ではないのだ。ヲタク業界で言われることだけど「プリキュアは大きいお友達(大人のヲタク)のものではなく、あくまでも子ども達のものである」って理論と似ている。アニメも絵本も大人が楽しむことに問題はないけれど、大人主体で考えるのには違和感がある。
正直「あんまり面白くなかったな~」としか思えない短編集だったけれど、小説家、桜木紫乃を知る…と言う意味では読んで良かったと思った。