『イエスマン “YES”は人生のパスワード』は2008年に公開されたアメリカ映画で実話がもとになっている。
実話ベース…とは言うものの、ジム・キャリー主演でコメディタッチの作品なので、休日の午後にスナック菓子でもつまみながら暢気に鑑賞できる。
私はちょっぴり心に引っ掛かる部分があったので素直に楽しむことができなかったのだけど、本質的には楽しくて良い作品だと思う。
イエスマン “YES”は人生のパスワード
イエスマン “YES”は人生のパスワード |
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Yes Man | |
監督 | ペイトン・リード |
脚本 | ニコラス・ストーラー ジャレッド・ポール アンドリュー・モーゲル |
原作 | ダニー・ウォレス |
出演者 | ジム・キャリー テレンス・スタンプ ズーイー・デシャネル ブラッドリー・クーパー |
公開 | 2008年12月19日 2009年3月20日 |
ざっくりとこんな内容
主人公のカールは銀行員。プライベートでも仕事でも答えは「NO」と言い、友人との付き合いや様々な勧誘・職場の個人融資の審査などあらゆることを断る生活を送っていた。
カールは3年前の離婚を引きずっていて、親友・ピーターが婚約を発表するが喜べず、職場では上司・ノーマンから昇進話がダメになったと伝えられる。
そんな中カールは、知人のニックから「“イエスマン”になって人生が変わった。お前も人生を楽しめ」と怪しげなセミナーの冊子を渡される。人との付き合いを断り続けて孤独死する夢を見たカールは将来が不安になり、見学のつもりでセミナーに足を運ぶ。
セミナーでは代表者のテレンスが初めて参加したカールに目をつけ対面式でイエスマンについて説く。テレンスはカールに、今後決断を迫られた時「イエス」といえば人生がすべて変わると伝える。続けてテレンスは、万が一それ以外の答えを言えば災いが起こると脅かされ、その場の雰囲気に押されたカールはイエスの誓いを立てる。
外に出た直後、ホームレスから車に乗せて欲しいと言われたカールは、そばにニックがいたためつい「イエス」と答えてしまう。
カールは車中でホームレスの男が要求するまま「イエス」と答えるはめになり携帯電話や持ち金のほとんどを渡してしまう。
ホームレスを降ろした後、車がガス欠になり連絡手段もないため、カールは数キロメートル離れたガソリンスタンドまでポリタンクを持ってガソリンスタンドまで歩いて行くことになってしまった。
ガソリンスタンドでカールはスクーターに乗る若い女性と出会い、置いてきた車の所まで彼女のスクーターに乗せてもらった上に、話の流れで若い女性からキスをしてもらうことになる。
カールは「イエス」と答えたことでラッキーが起こったと確信する。
その後、カールはノーマンから休日出勤を頼まれて「イエス」と答えたことで、昇進して給料が上がる。別の日、カールはピーターにこれまでの自分の言動を謝り、イエスマンになったことを伝える。
カールはこれ以降選択肢には必ず「イエス」と答えるようになり、その後の人生は急展開を迎える。
胡散臭い自己啓発セミナー
『イエスマン “YES”は人生のパスワード』を観る時に、本当は突っ込んじゃいけないポイントなのだと思うのだけど「そもそも、自己啓発セミナーの言う通りにするってどうなの?」ってところでモヤモヤしてしまった。
……いや。分かってる。『イエスマン “YES”は人生のパスワード』って題名なのだし、主人公が何らかのキッカケでイエスマンにならなきゃいけなかったのだから、そこは突っ込むポイントじゃないってことくらい。
自己啓発セミナー云々の話じゃなくて「人生は前向きに生きなきゃ駄目ですよ」「どんなことでも肯定的に受けと止めてチャンスを掴みましょう」ってところがポイントなのであって、キッカケが胡散臭い自己啓発セミナーだった…ってところは問題じゃない。
「どんなことでも前向きにとらえていきましょう」って発想はアメリカらしいし、ある意味正しい。
だけど、私はどうしても入り込むことができなかったのだ。
主人公のカール…あれではヤバイ宗教とかセミナーのカモでしかない。創作なので上手いこと話が進んでいったけれど、リアルでは絶対にやっちゃ駄目なヤツだ。
コメディ映画としては上質
胡散臭いセミナーがキッカケでカールがイエスマンになったことについては受け入れ難かったのだけど、それはそれとしてコメディ映画としては上質だと思う。
ジム・キャリーの顔芸はホント素晴らしい!
素直に「楽しい」と感じることのできる演技って凄いなぁ~と感心した。
コメディを演じる俳優さんって、個性的な顔立ちの人が多いのだけど、ジム・キャリーの場合はイケメンなのにコミカルな演技ができるのところが素晴らしい。
イエスマンになったカールはジム・キャリーのハマり役だったと思う。
アメリカ人の良心を確認した
私はちょっぴり楽しめなかった作品だけど『イエスマン “YES”は人生のパスワード』はTSUTAYAてもアマゾンプライム等で「感動の名作」みたいな枠組みで紹介されている事が多い。
好き嫌いはさておき『イエスマン “YES”は人生のパスワード』が感動枠に入れられるのは、なんとなく納得。
『イエスマン “YES”は人生のパスワード』に散りばめられている小さなエピソードとばれもこれも「いい話だなぁ」的な、良きアメリカのエピソードが多いのだ。『フォレスト・ガンプ』のノリと少し似ている気もする。
例えば、飛び降り自殺しようとしている人を助けたり、恋人のいない販売員の気持ちを和らげたり、カールが融資したお客達は、ちゃんと全額返済してくれたり。
良きアメリカ人が良きことをして、良き結果を得る。……この流れは観ていて素直に気持ちが良かった。
……私。カールがイエスマンになったキッカケが胡散臭いセミナーで「主催者と誓いを立てたから」なんて理由じゃなかったら、真正面から楽しめていたと思う。
個人的には、ちょっぴり引っ掛かりがあって本気で楽しむことが出来なかったのだけど、コメディ映画としてもヒューマンドラマとしても質の良い名作だと思った。