ひとことで言うと「10代で読んでおきたかった作品」といった感じ。
よく出来た作品だとは思ったが私には「ぬるい」としか思えなかった。どれほど素晴らしい作品でも出会うタイミングを外すと感動のツボにはハマらない。
15~16歳の自分に読んでいれば「思い出の1冊」になったかも知れないがピュアな感動に浸るには、少し年を取り過ぎたと言うべきか世に擦れて、ひねくれてしまったと言うべきか……
ポプラの秋
父が急死した夏、母は幼い私を連れて知らない町をあてもなく歩いた。やがて大きなポプラの木のあるアパートを見つけ、引っ越すことにした。こわそうな大家のおばあさんと少しずつ親しくなると、おばあさんは私に不思議な秘密を話してくれた―。
大人になった私の胸に、約束を守ってくれたおばあさんや隣人たちとの歳月が鮮やかに蘇る。『夏の庭』の著者による、あたたかな再生の物語。
アマゾンより引用
感想
父親を亡くしたことを自分の中で消化しきれない少女が「自分が死ぬ時は、あの世にいる誰かに手紙を届けてあげる」と豪語する、どこかミステリアスな雰囲気漂う老婆に出会い、成長していく物語。
「成長盛り」の少女の姿と、「老い」が生々しい老婆の対比が鮮やかで「現在の私」と「少女だった私」という「視点2本立て方式」が上手く効いていて読み物としては、完成度が高く、1人の少女の成長小説としても素晴らしかった。
ただ、物語の主軸になる「死」という問題が、あまりにもメルヘンと言うか、綺麗事として描かれているのが気になった。
「そうであって欲しい」という願いは理解できる。
そして、この作品の対象年齢を考えると丁度良い描き方かも知れないが、人間の通過ポイントとしての「死」を描くのであれば伝家の宝刀とも言える「あのネタ」を引っ張り出す必要は無かったような。
なにやら文句ばかり並べて立てているようだが「感動ポイント」が無かった訳ではない。
少女が「どうしても理解できなかったこと」が理解できるようになっていく過程は清々しいタッチで描かれていて、好感が持てたし人間の持つ「善意」や「優しさ」が感じられるエピソードは心温まるものがあった。
また何よりも少女の母親が背負っていた「秘密の重み」は真に迫っていた。
うむむむ。本にも「出会う時期」は重要なのだなぁ……「私たち、もう少し早く出会っていれば良かったわね」などと安物のドラマのような言葉を呟いてページを閉じた1冊だった。