微妙な作品だった。「癒し系」……なのだろうか?
猫のトマシーナの死と転生、そして獣医師の魂の復活、娘との和解、そして愛……という盛りだくさんな内容だったが、これっぽっちもハマれやしなかった。
前回読んだ『雪のひとひら』が良かったので「今回も…」と期待していただけに、ガッカリである。
トマシーナ
スコットランドの片田舎で獣医を開業するマクデューイ氏。獣医でありながら動物に愛情も関心も抱かない彼は、幼い一人娘メアリ・ルーが可愛がっていた猫トマシーナを病気から救おうとせず、安楽死させる。
それを機に心を閉ざすメアリ・ルー。町はずれに動物たちと暮らし、《魔女》と呼ばれるローリとの出会いが、トマシーナに新たな魂を与え、二人を変えていく。『ジェニィ』と並ぶ猫ファンタジイの名作を新訳で。
アマゾンより引用
感想
もう少し屁理屈を省いて「児童小説」として書かれたのなら、好きになれたかも知れないなぁ……と思う。
しかし大人の読み物としてはぬる過ぎるのだ。
トマシーナの死と転生はともかく、獣医師とヒロインの心の交流は、あまりにも都合の良すぎる展開で「そりゃ、ないぜ」と思ってしまった。
何もかもがラストに向かって、都合よく進んでいき過ぎたのだ。読め読めな展開をもってくるなら、ドキドキを引っ張ってもらいたいのに、ちっともドキドキしなかった。
それにラストもいただけなかった。
ハッピーエンドなのは良いけれど、あまりにも安易に問題を片付け過ぎているような印象を受けた。「犯した過ち」は物語の中で、ちゃんと帳尻を合わせてもらいたいものだ。「なかったこと」にしてはいけないと思う。まして生命に関わる問題はなおのことだ。
精神分析的なことからめて、絶賛されていることの多い作品だが、個人的には「ふざけんなよ」と思ってしまった。
意欲作かも知れないし、色々と深読みできる作品ではあるが、いかんせん物語としてイマイチだ。最後まで読んで、損しちゃった気分になった1冊だった。