『すべての女は痩せすぎである 真説・美人論』は「新説・美人論」という副題の通り「美人」に関するエッセイを集めた作品である。
村上龍『すべての男は消耗品である』をパクったかのような題名ではあるが私が「笑点」の司会者だったら、座布団を進呈したいくらい上手いと思った。
現実問題として、近年の日本人は男性が肥満傾向にあるのに対して女性の平均体重は、どんどん軽くなっているらしい。
すべての女は痩せすぎである 真説・美人論
- 美人がテーマのエッセイ
- 「京都や博多に生まれただけで、美人なの?」等、美人に関連する疑問等。
- 文章は軽めで読みやすい。
姫野カオルコの真骨頂は屁理屈にアリと私は思っているのだが彼女の魅力が綺麗な形で表現されたエッセイ集だと思った。
同じテーマで書かれた小説『整形美女』では、その理論にウンザリしてしまったが、こちらは短い文章で書かれている分だけ、スッキリまとまっていたように思う。
姫野カオルコの作品は、少し変わった視点で物事を捉えているのが魅力になっているが冷静な目で、世の中を観察しているというより、むしろ「私はこういう人間だ。私はこう考えている」という自己主張をしているような部分がある。
『すべての女は痩せすぎである 真説・美人論』では、姫野カオルコの自己主張が、気持ち良く展開されていたのに好感が持てた。
ただ姫野カオルコの説に納得したとか、共感したとかというと、そういう訳でもなくて、むしろ彼女が持ち出してきた問題定義に対して「私はこう思う」とか「それは違うのではないだろうか」とか自分の中で自問自答してみたりするには良かったとは思う。
そして、何より文章が軽快で読みやすく、あまり嫌味が感じられなかった。
私が気に入ったのは「美人論」を展開しているエッセイではなくて作者が高校生の時に、吉行淳之介と電話で交流していた時の思い出話だった。
吉行淳之介は自身が魅力的な作家であることは言うまでもないが彼女の語る吉行淳之介は、セクシーさが2割増というような印象を受けた。
もしかすると、独自の○○論を展開していくよりも、むしろ人間を描いた方が実力を発揮できるかも知れない……と思ったくらいである。
最近読んだ『整形美女』でガッカリしていた矢先に、この作品に出逢えたのでまた次も読んでみようかという気になれる作品だった。
サクサク読めて、ほどほどに面白く、読み応えもある手頃な1冊だと思った。
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すべての女は痩せすぎである 真説・美人論 姫野カオルコ 大和出版